9月の新興株<マザーズ、ジャスダック>マーケットまとめ

 9月も東証マザーズ指数はパフォーマンスで他指数を圧倒。指数別の9月の月間騰落率は日経平均株価+0.2%、TOPIX+0.5%、日経ジャスダック平均+2.4%に対し、マザーズ指数は+9.4%と2カ月続いて断トツでした。

 9月は世界的に新型コロナウイルスの感染者数が増加。一見するとネガティブに見えそうですが、コロナ禍で強烈ラリーを演じた日本の新興株市場。コロナラリー再来を見込むようなムードが勝っていたといえます。

 9月は月初に米ハイテク株が大幅調整しました。このタイミングでもツレ安を回避する無類の強さを示したのがマザーズ市場。年初来パフォーマンスでは、あのナスダック総合指数を凌駕(りょうが)しています(9月末時点の年初来騰落率:マザーズ指数+36.7%、ナスダック総合指数+24.5%)。

 この強さを受け、ある市場参加者は「海外投資家も日本のマザーズの強さには気付いている」と指摘。モメンタムフォロー型の海外短期マネーもマザーズに参戦している可能性は高いといえそうです。

 9月はNYダウもナスダック総合指数も月間ではマイナスでした。その中で日本株の相対的な強さが見られたのは、日本独自のカタリストである“スガノミクス”への期待があったといえます。

 14日に総裁選があり、16日に菅内閣が発足。その菅新政権の掲げる政策を手掛かりに、テーマ株物色が広がりました。デジタル化推進のためデジタル庁を創設、関連しそうな(実際関連するかは別として…)銘柄が強く買われました。

 関連しそうな銘柄がマザーズに多いため、スガノミクスは好相性のようです。

 また、スガノミクスがネガティブになる明確なセクターが「通信キャリア」でした。携帯料金値下げ圧力でNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3銘柄が空売り対象になったのですが、この動きがすごかったことも新興株市場的には“結果オーライ”に。

 タイミングを同じく、通信キャリアのソフトバンクが超大型PO(株式売り出し)を実施。手前で大きく下落していたことで、売出価格が1,204.5円と上場来安値水準で決定しました。

 価格決定後の買い戻しも入り、23日の受渡日終値も1,270.5円と“全員含み益通過”に成功。個人マネーが動き出す意味で大きなポジティブ要因になりました。

9月の売買代金ランキング

 ここ数カ月のコロナラリーで、個人投資家の資金が大きく膨らみ、リスクの高そうなところ(=ボラティリティの高い銘柄)に短期マネーが向かう傾向が強まっています。

 その中で優先順位が高いのは、株価モメンタムが強い株(=よく上がってる株)であって、株価指標面で割高かとか、上がっている理由が何かという要素は軽視されがちになります。

 9月の売買代金上位群には、ティーアンドエス(4055)、サンアスタリスク(4053)、ニューラル(4056)など直近IPO(株式の新規公開)株が多くランクイン。月間騰落率ではマイナスですが、どれも8月末~9月初旬にかけて上場来高値を更新していました。

「株価が一番強いのが“直近IPO”だから」、これが理由であって、上昇モメンタムが壊れると一気に離散…それ以上でもそれ以下でもないでしょう。

 直近IPOを除けば、9月末時点のマザーズ最強モメンタム株はBASE(4477)といえそう。9月末時点の25日移動平均売買代金は135.5億円で、8月末時点の107.1億円からさらに増加。東証1部主力銘柄群と比べても遜色ない流動性を持ち、個人投資家以外の短期マネーを相当量巻き込んでいると想像されます。

 ちなみに、9月末時点の東証1部の最強モメンタム株はチェンジでした。そのチェンジは月末にかけて急落、モメンタム株の需給豹変(ひょうへん)は事前に読めないし、悪転すると想像以上の調整につながるリスクをはらみます。

市場 コード 銘柄名 9月末
終値
時価
総額
売買代金
25日
移動
平均値
月間
騰落率
東証マザーズ 4055 ティアンドエス 18,620 332 152.6 -18.8
東証マザーズ 4477 BASE 11,000 2,249 135.5 20.5
東証マザーズ 4053 サンアスタリスク 2,742 1,010 121.5 -5.4
東証マザーズ 4056 ニューラル 5,980 835 105.3 -8.0
東証マザーズ 4385 メルカリ 4,850 7,594 79.2 0.8
東証マザーズ 4057 インタファクトリ 5,020 192 65.5 -23.4
東証マザーズ 2160 ジーエヌアイ 3,740 1,626 64.3 49.6
東証マザーズ 4883 モダリス 2,723 759 57.8 -21.3
ジャスダック 3776 ブロバンタワ 417 251 52.5 59.2
東証マザーズ 4479 マクアケ 10,620 1,239 52.1 1.1
東証マザーズ 4563 アンジェス 1,448 1,781 50.6 -4.1
東証マザーズ 4488 AIinside 44,050 1,656 47.8 -3.0
東証マザーズ 4393 バンクイノベ 3,665 145 46.2 -3.6
東証マザーズ 1447 ITbookHD 795 157 43.6 53.8
東証マザーズ 3689 イグニス 1,917 300 43.0 -38.1
東証マザーズ 3998 すららNT 6,980 443 35.1 20.6
東証マザーズ 4480 メドレー 5,040 1,523 35.0 10.9
東証マザーズ 6027 弁護士コム 11,180 2,489 32.6 3.0
東証マザーズ 4592 サンバイオ 2,045 1,059 32.4 43.6
東証マザーズ 7707 PSS 1,338 353 31.2 -16.4
【単位】9月末終値:円 時価総額:億円 売買代金25日移動平均値:億円 月間騰落率:%

(1)売買代金ランキング(5銘柄)

1 ティーアンドエス(4055・東証マザーズ)

 超好地合いの追い風に乗ったとはいえ、市場参加者の多くが驚いたセカンダリー急騰劇でした。

 8月7日に上場し、公開価格は2,800円で、初値は上場2日目に付けた7,010円。初値形成日含め、ここから怒涛(どとう)の12連騰。初値付けて12連騰するとか、過去にあったんでしょうか…。

 この12連騰の最終日8月26日に付けた2万9,260円が上場来高値ですが、公開価格のテンバガー(10倍高)を達成しました。

 市場参加者の多くが驚いた理由は、同社がシステム開発を主力とするシステムインテグレーターで、事業モデル的な新奇性があったわけでもないから。主要取引先はキオクシアや東芝などで、業績は安定しやすいものの、高成長は見込みづらいとみなされていました。

 ただ、需給要素では「ベンチャーキャピタルの持ち分がない」点が挙げられ、突発的な大口売りがこないと見越した短期勢の買いを原動力に、想像以上の勢いがついた…というところでしょうか。

 値がさ株になったことで、小口の個人投資家のエントリーが少ないことも需給引き締まりの理由といえそうです。

2 BASE(4477・東証マザーズ)

 前月に好決算を示したことで株価が一段上昇。ECシフトのメリット銘柄ですが、ネットショップの出店支援というニッチ分野のトップ企業ということで、目標とする時価総額が特にないことも上値追いの背景なのかもしれません。

 15日には、外資系証券が投資判断「ニュートラル」(目標株価1万円)で新規カバレッジを開始しました。ECの運営主体が大手企業から個人事業者へ広がるなか、ニーズが高まっている点などを指摘。目標株価は現行水準だったものの、海外投資家にBASEの存在を知らせるきっかけになった意味でプラス面が大きかったといえそうです。

 24日に、海外募集で120万株を公募増資すると発表しています。6%弱の希薄化要因になり、直後は株価も売られたものの…その下落分も月末にかけて全てリカバリー。

 株価がこれだけ上がったタイミングでの公募増資ですので、手取りでも約120億円の資金調達になります。この資金を広告宣伝や人件費などの成長投資に投入…コロナ禍の株高を活用してさらなる成長につなげる、新興系企業の理想モデルを示しました。

3 ニューラルポケット(4056・東証マザーズ)

 一つ前に上場したティーアンドエスが大化けしたことで、続くIPO(証券コードもティーアンドエスの次)の同社も大活況の幕開けになりました。

 8月20日に上場、公開価格は900円でした。同社の場合、AIソリューションの開発を主力とするIPO人気業態で、公開規模も5.7億円と小粒。初値高騰の要素は備わっていたとはいえ、上がり方が想像以上に強烈でした。

 上場3日目の8月24日に付けた初値は5,100円で、公開価格の5.7倍。これ自体すごいですが、初値付けた日から3日連続ストップ高に…。上場6日目の8月27日に上場来高値1万850円を付けたのですが、ティーアンドエスに続き(ティーアンドエスより早く)公開価格のテンバガーを達成しました。

 テンバガー達成後に急落しており、今のIPOバブルは“公開価格の10倍”がターゲットになっているのでしょうか。9月も逆張りの買いなど交えながら、AI関連でトップの高流動性銘柄に。

4 ジーエヌアイ(2160・東証マザーズ)

 8月の月間89%上昇に続き、9月も50%上昇で上場来高値を更新しました。新型コロナウイルスのワクチンや治療薬開発のバイオベンチャーばかり当初盛り上がりましたが、どれも株価は急落。最後に残ったのは、既存パイプラインを着実に進展させた同社でした。

 8月の株価急騰材料になったのが、肝線維症治療候補薬のパイプライン「F351」のフェーズ2試験完了と、初期段階分析で良好な結果を得たとの発表。続報として9月29日、上海で開催された最終報告会で安全かつ効果的と結論付けられたと発表しています。

 次のステップに向け、中国の当局(国家薬品監督管理局)の医薬品審査評価センターに相談するとのことです。

5 ブロードバンドタワー(3776・ジャスダック)

 政府のデジタル化推進に伴う恩恵がありそう(実際あるかどうかは別として)関連銘柄として人気化しました。

 前月に、中間決算の営業利益が会社計画比で大幅上振れしたと発表(通期見通しは赤字据え置き)。株価が上昇基調にあるなか、9月に最も人気化したテーマ性が乗っかったこと、低位株だったことが奏功した格好で大相場に発展しました。

 同社役員の村井純氏(慶應義塾大学教授)と菅総理が面会し、デジタル庁創設などについて意見を交わしたと23日に伝わっています。

 このニュースも手掛かりにした23日に、5,180万株という今年最大の出来高を記録(発行済み株数の85%)。ただ、東証が28日から日々公表銘柄に指定すると発表しています。直近の買い主体、そのほとんどが個人投資家の信用買いだったようで…。

9月の株価値上がり率ランキング

 9月に月間で2倍以上になった銘柄は2銘柄(※あくまで月末終値比較です)。8月の値上がり率ランキングは20銘柄中15銘柄がマザーズでしたが、9月はジャスダックとほぼ半々でした。

 9月の値上がり率首位ログリーは、8月も値上がり率2位(月間+155%)。7月末終値からわずか2カ月で、株価は7倍以上の大化け株となりました。

 ただ、8月の月間値上がり率首位だった不二硝子の9月騰落率は▲40%。短期勢の買い主体でつり上がる要素が大きいだけに、大相場が2カ月続くことは稀といえます。

 9月の値上がり率上位銘柄の特徴は、ランクインした20銘柄の全てが小型株という点(時価総額が最大の銘柄でもBBタワーの251億円)。

 マザーズ指数も高値を更新する好地合いでしたが、物色的には“小型の材料株のモメンタムに付け!”が主流だったといえます。正直、値上がり率上位といっても「なぜこれほど上がったのか理由不明」な銘柄は多かったといえます。

市場 コード 銘柄名 月間
騰落率
9月末
終値
前月末
終値価格
時価
総額
東証マザーズ 6579 ログリー 181.5 5,200 1,848 194
ジャスダック 4421 DIシステム 102.2 2,659 1,315 41
ジャスダック 6659 メディアリンク 97.1 611 310 35
東証マザーズ 6696 ピースリー 93.1 1,344 696 49
ジャスダック 6549 ディエムソリュ 78.0 2,398 1,347 66
東証マザーズ 4380 Mマート 77.5 1,324 746 65
ジャスダック 4736 日本ラッド 73.4 1,146 661 61
東証マザーズ 3931 バリュゴルフ 71.3 1,828 1,067 33
東証マザーズ 7067 ブランディン 70.6 2,300 1,348 37
東証マザーズ 4445 リビンT 69.1 4,550 2,690 61
ジャスダック 9685 KYCOM 64.8 936 568 48
東証マザーズ 4381 ビープラッツ 63.1 3,515 2,155 82
ジャスダック 3776 ブロバンタワ 59.2 417 262 251
東証マザーズ 3671 ソフトマックス 57.1 1,389 884 83
ジャスダック 9976 セキチュー 57.1 2,546 1,621 142
東証マザーズ 4437 GDH 56.9 1,373 875 45
東証マザーズ 1447 ITbookHD 53.8 795 517 157
ジャスダック 2373 ケア21 52.9 2,900 1,897 143
東証マザーズ 2334 イオレ 52.1 1,923 1,264 45
ジャスダック 4243 ニックス 51.4 1,051 694 24
【単位】月間騰落率:% 9月末終値:円 前月末終値価格:円 時価総額:億円

値上がり率ランキング(5銘柄)

1 ログリー(6579・東証マザーズ)

 8月中旬発表の通期大幅増額(今2021年3月期売上高32億円→38.7億円~40.8億円、営業利益0.5億円→1.4億円~2.0億円)を引き金に景色を変えた銘柄。

 ちょうど8月から値幅制限拡大ルール変更(2日連続ストップ高買い気配で3日目は上限値幅4倍)が適用されたこともあり、株価の急騰ぶりでも有名になった銘柄です。

 上方修正前の時価総額は31億円だったのですが、2カ月続いた大相場で時価総額は194億円に。9月に再始動したきっかけは、10日に発表した株式2分割。

 翌日16%高すると、分割権利取りの買いで怒涛の上昇に。さらに29日の分割後も2日連続ストップ高となり、9月末分割銘柄では一強状態でした(分割で上がらなかった他銘柄との違いは、最近の知名度だけなのでしょうか…)。

2 メディアリンク(6659・ジャスダック)

 超が付く低流動性の小型株が、材料をきっかけに急騰しました。3日に、中国最大の通信サービス事業者の一つが、中国全土をカバーする放送ネットワークの複数サイトの運用に向けて同社の「MD8000ソリューション」を採用したと発表。このサービスを利用すると、IPサービスを介した映像コンテンツの伝送を強化することができるようです。

 強そうな材料ですが、業績インパクトなどは未知数。とはいえ、発表前日2日終値時点の時価総額が17億円だったこともあり、需給ギャップで連日ストップ高に…。

 このサイズの小型株を機関投資家は触れず、株価を釣り上げたのは個人投資家の信用買いだったようです。東証が14日から信用規制をかけると、同日は18%安となり人気も離散しました。

3 Mマート(4380・東証マザーズ)

 2日続けてストップ高買い気配となり、値幅制限4倍拡大が適用されたマザーズの小型株。14日に発表した中間決算では、売上高が前年同期比8.8%増、営業利益が12.7%増と増収増益でした。

 さほどサプライズの大きい決算内容とも言えない印象でしたが、直前に決算期待の買い(決算プレー)が少なかったこともあったのでしょうか…。決算発表直前の時価総額が37億円、浮動株も少ない超小型株だったこともあって、想像を絶する好反応に。

 値動きだけでエントリーする投機マネーのすさまじさを示したのが、値幅制限4倍拡大が適用された17日でした。

 前日終値(S高買い気配)1,090円に対し、一時86%高の2,026円まで上昇(同日終値は1,488円)。この日に残した超長い上ヒゲ、まくれる日は来るのでしょうか?

4 ビープラッツ(4381・東証マザーズ)

 超小型株が発表したリリースをきっかけに急騰したのですが、同社の場合は2連(2日連続)リリースが刺激になったようです。

 2日に、同社のサブスクリプション統合プラットフォーム「Bplats Platform Edition」が経産省の推進する「IT導入補助金2020」のITツールに認定されたと発表。中小企業のITツールの導入を支援する補助金が出るという話で、最大450万円の補助金が受け取れるそうです。

 なぜこのリリースでストップ高したのか不明ですが、発表翌日3日はストップ高に。株価が動意付いたタイミングの3日引け後、今度はトヨタカローラ鹿児島の洗車サービスで「Bplats」が採用されたと発表。4日、5日とストップ高を続け、予想PER(株価収益率)は1,300倍台強に…すごすぎる。

5 ITbookHD(1447・東証マザーズ)

 個人投資家が活発に売買する意味では、スガノミクス関連銘柄のリーディングストックになったといえます。

 菅政権が自民党総裁選のタイミングで、「デジタル庁」の創設を打ち出しました。国と自治体のシステム統一などに動く方針が示されたことで、行政向けコンサルティング(マイナンバーコンサルティング、地方創生ソリューション)の実績がある同社がターゲットになったようです。

 小型株で低位株だったことが大きいといえそうですが、大相場の終盤になった24日は圧巻でした。この日の出来高は、上場来最大の2,172万株で、発行済み株数(1,980万株)を上回る規模に。

 なお、翌25日に“株価4ケタ(1,000円台)”を付けたからか達成感が広がり、東証が28日から信用規制をかけたことで急落。よくある材料株の顛末(てんまつ)でした。

10月に注目したい新興株の動き

 新興株市場で最も重要になっている「流動性」でいえば、“まだいける!”な状態で10月に入っています。10月に入っても連日、マザーズの売買代金は2,000億円以上を記録しています。

 マザーズ指数は年初来高値で、指数ベースでいえば全員含み益状態。ここまで積み上げた利確マネーも潤沢で、マザーズ銘柄の中で個人マネーは循環しています。この状況が続くなら、コロナ禍で始まったラリーは腰折れしないはずです。

 引き続き、注目すべきは市場全体の売買代金と、マザーズ市場のモメンタム(マザーズ指数が大きくトレンドを崩さないかどうか)だけでしょう。

 モメンタムという点でいえば、「マザーズ指数」という指数自体、過去と比べて崩れにくくなりました(そもそもは個人投資家の買い気が強いからですが)。

 マザーズ指数の「続落」という現象が、9月9~10日を最後に約1カ月発生していません。地合いの悪い日に下げても、翌日にあっさりリバウンドする…これは“押し目買い意欲が強い”ということ。しかも、マザーズ指数が高値更新するような状態で押し目買い意欲が強いわけで、滅多にない優良地合いが続いています。

 この溢れんばかりの株式投資熱(しかも短期で資産を増やしたい人が多い)で、心配になるのはIPOへの熱量が高過ぎることでしょうか。

 流動性が高く、値動きが激しいことも確定しているため、格好の投機対象なのは分かりますが、8月末~9月初旬(ティーアンドエスやニューラル、サンアスタリスクがバブル化した時期)と同じことが10月も発生しています。

 ティーアンドエス、ニューラルと2銘柄連続で、公開価格の10倍になるテンバガーを達成。これを、前回“伝説のIPOラリー”と称しましたが、どうやら“伝説”ではなく“ニューノーマル”のようで…。

 9月29日上場のヘッドウォータースの初値は、歴代最高の初値上昇率(公開価格の11.9倍)を記録しました。初値でテンバガーが生まれたほか、続くアクシス、タスキも、業態など無視で小型IPOの“目指せテンバガー”的な現象が生まれています。

 こうした投機に資金が集中し、マザーズ市場全体の売買代金の3割程度が、9月IPO(10月6日時点で6銘柄)で占拠されるような状態になっています。

 8月後半にかけたIPOラリー時も、9月初旬にバブルが弾けると、新興株全体の需給を悪くした場面を作りました。ここが需給面では短期的な注意点でしょうか。

 その他で心配な点を挙げるとすれば、東証1部の主力銘柄群で、下期相場に入って“物色の変化”が発生していること。

 下期相場に入ったと同時に、東証1部の流動性トップ級銘柄では任天堂が逆行安。ゲームの大型株のほか、ドラッグストア株、ホームセンター株など幅広い「巣ごもり特需銘柄」が露骨に売られる現象が起きています。

 巣ごもり需要で好調なニトリは、上方修正を発表後、明らかに“織り込み済み”的なネガティブ反応を示しました。巣ごもり需要で業績が伸びている銘柄に対し、今後の重要一服とか、業績モメンタムの停滞を先取る動きが出ているのかもしれません。

 下期始まった直後ですので、機関投資家の行動(巣ごもり関連銘柄のウエイトを減らし、コロナ禍で業績悪化した銘柄の回復を期待してバリュー株のウエイトを増やす)とも想像されます。

 ご存じの通りで、マザーズなど新興株市場は巣ごもりでゲームチェンジした銘柄ばかり。11月の決算発表シーズンに近づくなかで、これまで半年(2四半期)続いたように「好決算→株価上昇」という展開が続くのか? この辺りも気にすべきタイミングと思われます。

 とはいえ、最初に戻りますが、今の個人マネーの勢いが続くなら“余計な心配”で終わる可能性も十分ありますが…。