石油との付き合い方。先進国は“共存”、新興国は“先端技術模索時の足がかり”

 石油の時代が終わったかどうかを議論するのは、時期尚早だと筆者は考えています。

 先進国、特に欧州で盛んに議論されている、“e-Fuel(二酸化炭素と水素の合成液体燃料)”は、ガソリンや軽油に混合して使用されることが念頭に置かれていると報じられています。このe-Fuelを用いた燃料が普及することは、一定程度、化石燃料の需要が残ることを意味します。

 サトウキビやトウモロコシなどから作られるバイオエタノールと同様、あくまでも化石燃料由来のエネルギーをメインとして、再生可能燃料を混合させるわけです。欧州の“自動車業界”がe-Fuelを推進するのは、自らの業界を守る意味もある、との声もあります。日本でも、欧州と同様、トヨタやホンダ、日産などが研究に着手したと報じられています。

 電気自動車(EV)のエネルギー源は電気ですが、その電気はどのようにして作られているのか? と考えれば、化石燃料由来がまだまだメインです。それを考えれば、EVとて完全にクリーンな自動車とは言えません。

 自動車業界、とくに内燃機関に携わっている企業にとって、現在の技術を継続して活かすことができるという意味で、e-Fuelの開発・普及は朗報といえるでしょう。欧州や日本の自動車業界の後押しがあれば、e-Fuelの普及が進み、同時に、化石燃料の使い道も残る可能性が高まります。これはまさに、先進国で起こり得る化石燃料との“共存”と言えるでしょう。

 また、新興国の一部では、まだまだ石炭をメインのエネルギー源としている国があります。一足飛びに、石炭から再生可能エネルギーに移行することよりも、まずは先進国がかつてそうだったように、石油や天然ガスに移行し、その後再生可能エネルギーに移行することが、現実的であると思います。

 このように考えれば、世界で石油が使われなくなる日は、当面来ない、つまり、石油の時代が終わったかどうかの議論はできる段階にない、と言えるでしょう。