米国の金融緩和と、新興国の中央銀行の金購入拡大が続いていることは、好材料

 以下は米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)を含む米国の銀行の資産の額と、米国の通貨の流通量を示す代表的な値であるマネーストック(M2)です。

図:FRBバランスシートと米国のマネーストック(M2) 単位:兆ドル

出所:ブルームバーグのデータより筆者作成

 中国の新型コロナが米国でも急拡大し、“パンデミック(世界的な大流行)”化した、今年3月以降、急激にバランスシートが拡大しています。これは、FRBによる大規模な金融緩和策における、米国債などの資産の買い入れが始まったことを意味します。中央銀行であるFRBが社会から資産を買い取ることは、社会に資金が供給されることを意味します。これにより、オレンジの点線で示したマネーストック(通貨の供給量)が増加しました。

 米ドルの供給量の増加は、米ドルの価値が希薄化する懸念を生みます。この点に、米ドルと金(ゴールド)が、“世界共通のお金”の性格を持つことを重ねて考えれば、米ドルに希薄化懸念が生じれば、相対的に、代替通貨の側面から、金を保有する妙味が増す、と言えると思います。

 また、FRBは金融緩和策の一つとして、来年末まで金利の誘導目標を引き上げない(利上げを行わない)ことを明言しています。この、“利上げを行わない”こともまた、代替通貨の側面から、米ドルに対し相対的に、金を保有する妙味が増す、要因になり得ます。

 新型コロナによって大きなダメージを負っている米国経済を立て直すために行われている、資産の買い入れや金利を低水準で据え置くなどの、金融緩和策は、今後も継続するとみられます。それはつまり、金相場が、代替通貨の側面からサポートされる状況が継続することを、意味します。

 次に、中央銀行の金保有高の増減について書きます。以下は、統計で確認できる150を超える国々の中央銀行が保有する金の、半年ごとの増減を示しています。

図:中央銀行の金保有高の増減(半年ごと) 単位:トン

出所:World Gold Councilのデータより筆者作成

 新型コロナの感染拡大で受けたダメージへの対応として、金を売却する国も、中にはあります。それでも、合計すれば、2020年1月から6月の半年間は、比較的高水準の増加でした。

 半年ベースで、2009年から中央銀行が“金市場の買い手”である状況が、続いています。今後も、当座的な資金繰りのため、金を売却する国が出る可能性はありますが、それ以上に、全体的には、コロナ禍の自己防衛の手段として、中央銀行の金保有高は増加する可能性があります。この点は、今後も、長期的な金相場を支える要因になり得ます。