悲観論の同時後退は一時的で、今後、後退した悲観論は復活する可能性あり

 4つの悲観論の後退について、それぞれ、今後の展開を考えてみます。

(1)バイデン氏が、副大統領候補にハリス上院議員を選出した。
→黒人女性初の副大統領誕生、に期待が高まり、混迷する米国に明るい話題をもたらした。
 →新型コロナによってもたらされている米国経済へのダメージや、深刻化する米中問題による負の影響を、副大統領候補の誕生だけで相殺できるとは、考えにくい。また、ハリス氏が副大統領となり活躍するためには、11月3日(火)に予定されている米大統領選挙で、バイデン氏が、トランプ氏に勝利する、という大きなハードルを越えなければならない。

(2)米金融大手ゴールドマンが、S&P500企業の通期収益予想を引き上げた。
→懸念される新型コロナの米国企業へのダメージが限定的である期待が生じた。
 →同日公表された米国の石油消費量は、年末にかけて回復することが見込まれているものの、コロナ想定前に比べればまだ低い水準であり、米国経済が回復することを、企業の収益予想の引き上げだけで、期待することはできない。

図:米国の石油消費量の見通し 単位:百万バレル/日量

出所:EIA(米エネルギー省)のデータより筆者作成

(3)香港国家安全維持法による逮捕者が保釈された。
→中国による香港メディア・活動家への言論統制が緩んだと、受け止められた。
 →保釈直後、活動家は再度、中国政府を批判する発言をした。今後、さらに香港の市民と中国政府の対立が深まる可能性がある。

(4)ロシアで、世界初のワクチンが承認された。
→新型コロナとの戦いで、人類が大きな一歩を踏み出した可能性が生じた。
 →臨床試験は未完了であり、供給できる数も十分でない可能性がある。

 上記のとおり、4つの悲観論の後退は、いずれも一時的なものである可能性があります。つまり、資金の逃避先(有事のムード)として金の需要が減退する懸念も、一時的である可能性があるわけです。