8月に注目したい新興株の動き

 8月相場というのは、日本の株式市場にとって“いいイメージが無い”特異月になります。外国人投資家が、アベノミクス相場の始まった2013年以降で見ても、8月に限ると毎月売り越し(昨年は現物と先物合算で1.5兆円売り越し)。今年も外国人売りが警戒されますが、それを東証1部は日銀ETF買いで吸収するといった構図が想定されます。本来は自社株買いも加勢するのですが、今年はコロナ影響で自社株買いが激減。お盆休みもあって、夏枯れで薄商いが続くことが予想されるなか、上値をグイグイとるイメージはイマイチ描けないところでしょうか。

 新興株市場においても同様です。8月の東証マザーズ指数の月間騰落率は、過去10年平均で▲4.7%(昨年は▲7.0%)。月別パフォーマンスは12カ月中最悪で、毎年警戒されながら、結果的に「8月下がる」を繰り返しています。ただし…これはあくまで平常の8月であればともいえます。現在はどう考えても平常ではありませんよね。ここからお盆休み含めて自宅で過ごす人も増えそう。そうなると、4月7日の緊急事態宣言以降、マザーズ市場で起きた「個人投資家の株売買急増」という現象が再来する可能性もあります。そうなれば、ポジティブ。ただし、巣ごもりで今回も株売買を活発にやるかどうか?は蓋を開けてみないと分からないのですが…いずれにしても、個人のやる気にかかっています。流動性(=マザーズの売買代金)が命!

 その流動性でいえば、マザーズ市場の1日当たり売買代金平均が7月は1902億円でした。6月の同2149億円より1割強の減少で、売買代金が減ったのは4カ月ぶり。7月のマザーズ指数は4カ月ぶりの月間マイナスですから、流動性で今のマザーズ市場の地合いは解説できるところがあります。だからこそ、8月も“1日当たり2,000億円程度の売買代金”を維持したいところ。とくに7月は、マザーズ指数が調整した7月第3週に、個人投資家が差引245億円(現金88億円、信用157億円)の買い越しを記録しました。これは、マザーズ市場における、週間ベースの歴代最高の買い越し額です。個人投資家がかつてない熱量で買い向かっている形で迎える8月だけに、ここで買った投資家が気分良くトレードできるには、新興株市場が上がるしかない…。うまく回転すれば、個人の巣ごもり買いという今しか無いフローが沸いてくるはず!売買代金を見ながら、地合いの良し悪しを日々感じてください。結構下がったから値ごろ感で買う、というような逆張り買いは本当に向かないと思います。

 なお、8月第3週(11日~14日)がマザーズ銘柄の決算発表集中週になります。この4営業日だけで約150社が決算発表を予定。ポジティブ、ネガティブ両サイドでサプライズが乱発し、当該銘柄の株価が大きく動くタイミングになります。ここまでの“決算プレー”を見ている限り、コロナ影響が業績にポジティブと予想される銘柄は、決算発表に向けてかなり値上がりする傾向があります。そして、主に第1四半期決算の発表タイミングなのですが、(決算に対する期待値が上がり過ぎて)上方修正などのサプライズが無ければ、好決算でも急落する例が見られます。誰が売ってるの? くらい売ってくるのは、決算またぎでサクッと利益をとりたい信用買いの投機勢。その会社の決算の特性を知らず、決算プレーとして処分してくるだけです。第1四半期が好決算にも関わらず急落した銘柄を調べる、その努力が実を結ぶことに期待します。