ドル/円は、長期的には、購買力平価(企業物価ベース)に沿って動いている

 ドル/円は、短期的には日米金利差で動くが、長期的には、購買力平価(企業物価ベース)の変動に沿って、動いていることがわかります。

<ドル/円為替の購買力平価(企業物価ベース)と実際のレート推移:1973年1月~2020年7月(購買力平価は2020年6月まで)>

出所:購買力平価(企業物価)は公益財団法人国際通貨研究所

 購買力平価(企業物価ベース)は、ひとことで言うと「貿易収支を均衡させる為替レート」です。

 実際の為替が、購買力平価よりも大幅に円高になると、日本企業は輸出競争力を失います。購買力平価よりも大幅に円安になると、日本企業の輸出競争力が飛躍的に高まります。短期的に問題にならなくとも、長期化すると、貿易不均衡が起こり、最悪、貿易摩擦につながります。

 ただし、近年は、購買力平価が為替レートを決めることは、ほとんどなくなりました。貿易収支よりはるかに規模が大きい「資本収支」が、為替を動かすようになったからです。為替アナリストの間で、購買力平価はあまり話題にならなくなりました。資本収支に影響を与える「内外金利差」に、為替市場の関心は集中しています。

 それでも、購買力平価が、間接的に為替相場に影響を及ぼすこともあります。ドル円が、購買力平価よりも大幅に円安になると、米国から「円安批判」が出ます。米国からの政治圧力によって、円高が進みます。