FRBの積極的な量的緩和が、ドル安(円高)の背景

 ドル/円は、日米の金融政策の差で動きます。日本で大規模な量的金融緩和を行い、円の供給をどんどん増やしていくと、円の価値は下がります。つまり、円安になりやすくなります。逆に、日銀が引き締めに転じ、円の供給を減らすと、円の価値が上がり、円高となります。

ドル/円は、日本の金融政策だけでなく、米国の金融政策にも大きな影響を受けます。FRBが大規模な量的金融緩和を行い、ドルの供給を増やせば、ドルの価値が低下し、ドル安(円高)となります。FRBが引き締めれば、逆にドル高(円安)が進みやすくなります。

 つまり、ドル/円は、日米金融政策のスタンスの差で動くと言えます。金融政策のスタンスの差が表れやすいのが、日米の金利差です。以下の通り、ドル/円は、日米金利差に影響を受けて、動いています。

<日米2年金利差(2年国債利回りの差)推移:2008年1月~2020年7月>

出所:楽天証券経済研究所作成

<日米2年金利差と、ドル円為替レート推移:2008年1月~2020年7月>

出所:楽天証券経済研究所作成

出所:楽天証券経済研究所作成

 2008~2012年にかけて、FRBが大規模な量的緩和を行う中、日本銀行は金融緩和に消極的だったため、日米金利差が縮小し、ドル安(円高)が進みました。2013~2018年にかけて、日銀が積極的な量的緩和を行う中、FRBは引き締めを行いましたので、日米金利差が拡大し、ドル高(円安)が進みました。

 ところが、2018年以降、FRBが緩和姿勢に転じたので、日銀が異次元緩和を続けていても、ドル高(円安)は進みにくくなりました。2020年にFRBが緩和をさらに強化し、米金利が急低下すると、ドル安(円高)が進みました。

 ただし、今のところ、ドル安が加速する兆しはありません。コロナ・ショックが起こってから、基軸通貨ドルの需要が拡大しているからです。米中貿易戦争の影響で、世界経済が分断される流れも、ドルを確保する動きにつながっています。

 日米金利差の縮小は円高要因ですが、コロナ・ショックが収束するまで、基軸通貨ドルへマネーが回帰する流れも続くと考えられることから、当面のドル/円は、1ドル=103~108円の範囲で動くと考えています。