5月に注目したい新興株の動き

 大型連休が明けた7日以降、新興株市場はどうなるか?を想像するうえで、気になるのは前月に大きく上昇した反動でしょうか。ただ、4月に大きく上昇したから割高になって買いにくくなったのか?というと、日本のマザーズ市場に関していえば、“そんな野暮なこと考えるだけ無駄”というのが率直なところ。

 マザーズ指数の終値ベースの年初来安値は3月16日ですが、このときのマザーズ指数の予想PERは248倍でした。それが、その後の急激リバウンドを経て、4月末時点では同303倍。どっちにしても超割高であって、「PER250倍なら買いたいけど300倍は買いたくない」なる感覚を持って参加している投資家など皆無でしょう。4月に上がったからといって、ファンダメンタルズ的に警戒する必要が出てきたわけではありません。

 ではなぜ、4月は上がったのか? 何かマザーズが良くなったのか?…一切そんなことありません。まともな機関投資家が、他人の資金の運用に新興株を積極的に取り入れたいと思っているとは到底思えません。

 それでも上がるときは上がる、これが株であって、そういう機運が生まれてしまえば、急に地合いなんて良くなるもの。その機運が生まれたきっかけは、「緊急事態宣言」だったように思います。事実、マザーズがパフォーマンスで他の指数を圧倒し始めたのは、緊急事態宣言発令と同タイミングでした。

 数ある個別株の中で、(今の環境下に限れば…ですが)マザーズ銘柄に優位性が生じる理由はいくつか挙げられます。まず、新型コロナウイルスの影響により下方修正が相次ぐなか、(1)そもそも割安株が極めて少ないため、下方修正で割安感が後退するといった感覚が皆無、というのが東証1部などとの違いでしょう。そして、下方修正と合わせて減配リスクが指摘されるなか、(2)そもそも高配当株が極めて少なく、減配リスクと無縁、でもあります。

 また、GW明け後に決算発表ラッシュとなりますが、ほとんどは3月決算企業の本決算です。先に決算発表済みの大企業でも、今期予想「未定」が相次いでいます。

 見通しが開示されない銘柄への投資の消極化が予想されるわけですが、(3)3月決算企業の比率が低い、というのもマザーズの特徴です。東証1部銘柄の約7割が3月決算企業ですが、東証マザーズ銘柄は約3割。マザーズでは、13日~15日が決算発表のピークですが、主力級では13日発表のそーせいは12月決算企業ですし、14日のメドレーも12月決算。15日のフリーは6月決算で、3月IPO銘柄で活況となったサイバーセキュリティクラウドも12月決算です。

 それぞれ、決算発表の前後では材料になるでしょうが、あくまで短期の決算プレー。新興株市場全体の趨勢としては、緊急事態宣言が5月末まで延長になったことのほうが大きく、個人投資家の売買活発化がもう1カ月続くことのメリットを受ける可能性が出てきました。

 マザーズ銘柄は“流動性が命”です。不要不急の分析は必要ありません、モメンタムが生まれたら、そのモメンタムが生きているかどうか? を日々探るのみです!

 では、何を見ればいいか? となると、チャート分析ではなく、「売買代金の絶対額」だけです。売買代金は嘘をつかない数字、これが高水準というのはお金が回っている証だからです。その目安としては、「マザーズの1日の売買代金1,000億円以上」で良いと思います。今年の年初来の1日当たり売買代金の平均が963億円です。売買代金の金額別で調べてみると、以下のようになります。

  1. 売買代金800億円未満 27営業日(上昇11、下落16) 騰落率平均▲0.12%、
  2. 売買代金800億円~1,000億円 33営業日(上昇14、下落19) 騰落率平均▲0.65%
  3. 売買代金1,000億円以上 20営業日(上昇13、下落7) 騰落率平均+0.77%

 売買代金が1,000億円以上あれば、何かが売られても、何かが買われる状態になっているはずです。例えば、4月のリーディングストックになったアンジェスが売られても、何かに資金シフトが起きれば1,000億円以上をキープできるはずです。

 仮に、日経平均株価が急落し、アンジェスを売った資金で「日経平均レバレッジETF」に資金シフトが起きるような展開になると、マザーズのモメンタムは失われ始めるでしょう。そういうことに弱いのがマザーズ。そもそも、質の高い市場ではないため、急にマザーズが良くなったわけではない…そこだけを理解し、割り切って付き合うには、今のマザーズは魅力的な投機の機会を提供してくれるはずです。