4月の新興株<マザーズ、ジャスダック>マーケットまとめ

 歴史的な暴落相場を経た4月の株式市場は、米国株市場を主役とするリターン・リバーサルに転じました。

 FRB(米連邦準備制度理事会)が高利回りのジャンク債やローン担保証券も購入対象とする新たな資金供給策を決めると、「金融システム不安の回避が確実になった」との見方が広がり、株への資金回帰が加速。月後半にかけては、米ギリアドの「レムデシビル」など新型コロナウイルスのワクチン期待もリスクオン材料に。感染者数のピークアウト傾向や、経済再開のガイドラインを受け、“ポスト・コロナ”を先回る展開に発展しました。

 こうなると、度肝を抜くほど悪い経済指標に対しても、「こんなのバックミラーだから」という理由で不問とし始めます。VIX(ボラティリティインデックス:恐怖指数)の低下も相まって、機械的に株のウエイトを元に戻そうとする動きも広まったといえそうです。

 米国株の元に戻ろうとする動きの強靭さを受け、日本株も便乗的に連れ高したのが4月相場。世界に周回遅れで緊急事態宣言を出したのは4月7日。最初は7都府県が対象だったものの、16日には47都道府県に拡大されました。

 自粛が経済活動を麻痺させるなか、徐々に企業業績の下方修正なども出てきました。実体経済の悪化は肌感覚でも理解できる一方、滅法強い米国株に連れ高する格好で水準を切り上げる日経平均株価…。

 とりわけ月の中旬から、実体経済に逆行高する日経平均から距離を置きたい投資家が増えたのか、東証1部の売買代金も“コロナ前”水準に戻り、ようやく平常運転に戻りました。その後は月末まで、不要不急の売買はしない…そんな雰囲気が東証1部市場には続きました。

 そのなかで、異彩を放ったのが新興株市場でした。タイミング的には、日本の緊急事態宣言発令が報じられた6日からラリーが開始。4月安値は3日の589ポイントですが、ここから月末30日高値795ポイントまで怒涛の上昇劇を演じました。

 この間では、WTI原油先物(5月限)が史上初のマイナスとなった直後(21日)、個人投資家に人気だった原油ETFの暴落に巻き添えを食らう場面があった程度。ワクチン期待に紐づいてバイオ株が盛り上がったこと、新型コロナ影響をネガティブとする銘柄が少ないこと、むしろテレワークやオンライン診療、eラーニングなど社会構造の変化をチャンスにしそうな会社が多いこと―などが追い風だったのでしょうか…。

 4月の月間騰落率は、日経平均株価+6.7%、TOPIX(東証株価指数)+4.3%、日経ジャスダック平均+7.3%といずれも大幅高。ですが…マザーズ指数は+27.6%と、13年9月以来、6年7カ月ぶりの上昇率に。

4月の売買代金ランキング(人気株)

 先月に続き、売買代金トップは新型コロナウイルスのワクチン開発にいち早く名乗りを挙げたアンジェス。3月末の売買代金25日移動平均値66.5億円に対し、4月末は214.4億円と3倍以上に商いは膨らみました。

 流動性がさらに跳ね上がった状態で、株価が月間2.1倍強になったのもすごい! これは、2位のサイバーセキュリティクラウドにも言えること。買うから上がる、上がるから買う…このサイクルで作られた短期利益が他のバイオ株や直近IPO株へとグルグル回転しました。月の途中には、マザーズの何を買っても上がるような時期が何度かありましたね。

 売買代金のトップ20銘柄全て上昇するという、新興株市場では珍しいハッピーな1カ月に。これまで何度も書いてきましたが、新興株市場は“流動性”が全てです。

 この4月は、流動性が跳ね上がり、結果的に新興株市場の活況につながったと断定できます。1日当たりのマザーズ市場の売買代金平均は、1月が873億円、2月が785億円、3月が833億円…これが、4月に1,272億円に急増しました(前月比53%増!)。世界で最初に新型コロナ感染により巣ごもり生活をした中国の武漢で“株ブーム”が起きたことが話題になりました。

 日本でも、新興株が盛り上がり始めたタイミングを考えても、巣ごもり(例えば、テレワークで家にいる会社員がネットで株売買するなど)と新興株の相性が良好という意味で中国と似ている部分も?

市場 コード 銘柄名 4月末
終値
時価総額 売買代金
25日移動
平均値
月間騰落率
東証マザーズ 4563 アンジェス 1,489 1,672 214.4 115.5
東証マザーズ 4493 サイバセキュリ 21,220 489 90.1 115.7
東証マザーズ 4480 メドレー 2,760 779 53.9 39.3
東証マザーズ 9326 関通 2,981 90 35.7 105.7
ジャスダック 2484 出前館 1,462 1,250 35.6 37.9
ジャスダック 7564 ワークマン 6,870 5,623 35.2 15.7
東証マザーズ 4385 メルカリ 2,713 4,227 30.9 29.2
東証マザーズ 4434 サーバーワクス 14,890 503 29.7 14.0
東証マザーズ 3990 UUUM 2,397 468 20.0 16.6
東証マザーズ 3479 TKP 2,054 782 19.3 65.5
東証マザーズ 3906 ALBERT 5,190 231 18.5 51.1
東証マザーズ 6034 MRT 1,292 74 18.5 16.1
東証マザーズ 6095 メドピア 1,649 343 17.8 15.4
ジャスダック 4978 リプロセル 387 276 17.6 5.4
東証マザーズ 2160 ジーエヌアイ 1,489 646 17.4 16.6
ジャスダック 2702 マクドナルド 5,280 7,020 16.7 8.4
東証マザーズ 4586 メドレックス 333 51 15.2 92.5
東証マザーズ 6027 弁護士コム 6,820 1,518 14.9 61.4
東証マザーズ 4565 そーせい 1,510 1,165 14.4 16.9
ジャスダック 6324 ハーモニック 5,030 4,845 14.1 6.5
【単位】終値:円  時価総額:億円  売買代金25日移動平均値:億円  月間騰落率:%

売買代金ランキング(5銘柄)

1 アンジェス(4563・東証マザーズ)

 新型コロナウイルスの純国産ワクチンの開発へ想いを寄せ、株価は天にも昇るような勢いで急上昇(天に昇った株はいまだかつて存在しませんが)。これまで9月をメドとしていた臨床試験(治験)について、動物試験の進捗が順調なため8月実施へ繰り上げるようです。アンジェスのワクチンが医療現場で使われる日を誰もが待ち望んでいます。

 4月は急騰しましたが、売買量も尋常ではない高水準でした。この点を踏まえると、治験の開始や治験結果を先取るというより、急激に跳ね上がった流動性に着目して短期資金が集まった側面が大きそう。とくに、米ギリアドの「レムデシビル」などと違い、治験結果の成否に気を揉むような段階では無い(=治験失敗による急落リスクが今は無い)ことも大きかったように思われます。

2 サイバーセキュリティクラウド(4493・東証マザーズ)

 4月に起きた直近IPO株バブルのシンボルストックでした。上場したのは3月26日。AI技術を活用したサイバーセキュリティサービスの開発・提供を主力とする企業です。3月末終値は9,840円でしたが、これが21日に付けた高値45,050円に向けて一時4.6倍に爆騰したわけですから驚愕。

 直近IPO株人気がヒートアップするなか、テレワーク増加でセキュリティー対策の需要が増えるとの思惑があったようです。買うから上がる、上がるから買う…さらに言えば同社株の場合、株価が“値がさ化”したため、小口投資家の参戦が少なくなった点も需給を引き締めたように思われます。上場来高値を付けたタイミングでは、時価総額が(瞬間的にですが)1,000億円を突破。今期予想売上高11億円程度の会社が時価総額1,000億円超…バブルでしたね。

3 メドレー(4480・東証マザーズ)

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、初診患者にもオンライン診察が解禁されました。クラウド診療システム「CLINICS」などを手掛ける同社は、“遠隔医療”の関連銘柄のトップピックとして人気化。17日には新規事業としてオンライン服薬指導支援システムの9月開始を発表、翌20日には上場来高値を3,645円まで切り上げました。

 ただ、月下旬は一貫して利益確定売りに押される展開へ。「日本国内の新型コロナウイルス新規感染者数が減少傾向になると売られる」との見方も。また、月末にかけては、同社の営業手法に対して現場の医師から疑問の声が挙がっているとの記事を一部週刊誌が掲載。これも短期的には売り材料になったとか?

4 出前館(2484・ジャスダック)

 外出自粛で外食が控えられたほか、休業要請に応じた飲食店も多数出ました。これで特需が生まれたのが、料理宅配サービス。報道によると、7日の緊急事態宣言後に、同社が手掛けるデリバリーサイト「出前館」の利用者は6割も増加しているようです。

 出前代行業者への支援策を決める自治体が出始めるなど、関連ニュースが相次ぐなかで同社の株価も大きく上昇。月後半は利食い売りに押されましたが、「緊急事態宣言が1カ月程度延期される方向」と伝わった月末にかけては再浮上。宅配特需がいつまで続くか? 今後の株価の焦点もそこだけですね(緊急事態宣言の解除は売り材料になる)。

5 UUUM(3990・東証マザーズ)

 2日に鎌田社長が「こんな世の中の状況を吹っ飛ばすレベルのものをちゃんと仕込んでいる」と意味深なツイート。思惑で株価も急騰したのですが、翌4日以降は梯子を外され、またしてもダウントレンドに。引き金は、UUUM所属の美容系ユーチューバーとして人気の関根りさ氏の独立発表でした。所属する人気ユーチューバーの脱退、これが足元まで続いたUUUM株の売りカタリストです。14日引け後には、今期の業績予想を下方修正。純利益予想を半減以下に減額し、前期比55%減の4億円を見込むとしました。

 最悪のムードを漂わせていた同社株でしたが、28日に吉本興業との業務提携を発表したことで一変。翌30日、31日と2日続けてストップ高しました。これが、鎌田社長のツイートした“こんな世の中の状況を吹っ飛ばすレベルのもの”だったのでしょう。吉本興業に所属するタレントのユーチューブチャンネルの共同運営などで協業するようです。

4月の株価値上がり率ランキング

 4月もテーマとしては新型コロナウイルスにまつわる切り口が強かったのですが、何といっても数年に1度レベルの好地合い。“これが上がったから(似たような)これも上がる”的な連鎖反応がいたるところで見られました。その最たる例が、3月IPO株のバブル化現象でしょう。

 3月といえば、IPO銘柄の初値の公開価格割れが続出し、いわゆる“IPO株神話”が崩壊しました。そして、これを理由に4月IPO予定銘柄の「上場キャンセル」が相次ぎます。4月にIPOの延期・中止を決めた企業数は14社で、これは史上最多です。

 ただ、IPOという資金吸収要因が消えていくことは、既存の上場銘柄にはポジティブでもあります。それが理由なのか、何なのか…シンボルストックとなったサイバーセキュリティクラウドを筆頭に、NexToneや関通、ミクリードなど直近IPO銘柄が大活況に。

「そろそろ終わる」と言われながらも、連日で上値を切り上げる様は凄まじかったですね。まさに、短期間で資金を膨らませたい投機勢にとっての“禁断の果実”。「ストップ高に行くから買う」「次の日ギャップアップで始まるからS高でも買う」の繰り返しに。

市場 コード 銘柄名 月間騰落率
(%)
4月末
終値
前月末
終値価格
時価総額
(億円)
ジャスダック 2191 テラ 170.0 297 110 70
ジャスダック 7610 テイツー 156.0 64 25 37
東証マザーズ 7094 NexTone 139.1 6,060 2,534 187
東証マザーズ 3359 cotta 124.2 482 215 53
東証マザーズ 4493 サイバセキュリ 115.7 21,220 9,840 489
東証マザーズ 4563 アンジェス 115.5 1,489 691 1,672
ジャスダック 8256 プロルート 114.8 131 61 37
東証マザーズ 3542 VEGA 114.0 918 429 95
ジャスダック 7895 中央化学 113.9 721 337 152
東証マザーズ 7707 PSS 106.5 884 428 233
東証マザーズ 9326 関通 105.7 2,981 1,449 90
東証マザーズ 4586 メドレックス 92.5 333 173 51
東証マザーズ 7687 ミクリード 91.8 911 475 19
東証マザーズ 4598 DELTA-P 91.4 1,495 781 67
東証マザーズ 6557 GBHD 90.9 1,861 975 49
東証マザーズ 4490 ビザスク 83.0 1,830 1,000 157
東証マザーズ 4482 ウィルズ 81.4 4,055 2,235 187
ジャスダック 4690 日パレット 81.1 4,385 2,421 37
東証マザーズ 6090 HMT 80.4 882 489 52
東証マザーズ 7091 LPF 77.7 3,750 2,110 57
【単位】月間騰落率:%   4月末終値:円   前月末終値価格:円   時価総額:億円

値上がり率ランキング(5銘柄)

1 テラ(2191・ジャスダック)

 27日、新型コロナウイルス感染症に有効な新薬の開発に係る事業を新たに開始すると発表。間葉系幹細胞を用いた治療法でセネジェニックス・ジャパンと共同研究契約を結び、両社で新型コロナに有効な新薬を共同開発するそうです。

 同じ創薬ベンチャーであるアンジェスが先に急騰、これが連想されて買い注文が殺到したわけですが…27日時点の時価総額はわずか39億円だったテラ。需給ギャップで3日連続ストップ高となり、この材料一発で4月の値上がり率トップ銘柄となりました。

2 NexTone(7094・東証マザーズ)

 歴史的悪地合いに上場した不運の3月IPO銘柄の一角(上場日は3月30日)。初値は、公開価格1,700円を少し割り込む1,660円。そこから14営業日後に、最高値で7,160円まで上昇するとは…恐るべし4月の直近IPOバブルでした。

 同社のビジネスモデルは音楽の著作権管理で、これは上場企業としては初モノです。国内の競合は有名なJASRACのみで、現在は二強体制。エイベックス所属アーティストなど有力アーティストの多くの楽曲を管理しています。同社はコンサートやカラオケでの使用に伴う「演奏権」には進出しておらず、外出自粛で音楽のダウンロード数が増加するメリットだけを享受する巣ごもり関連株ともいえるようです。

3 cotta(3359・東証マザーズ)

 新型コロナによる外出自粛のメリット銘柄として人気化。きっかけは、8日に発表した3月のメディアサイト新規会員登録数でした。同社はパンや菓子商材の通販サイトを運営していますが、そのサイトの新規会員登録数が前年比で3倍(!)に伸びたと。

 法人向けでは、少量単位での注文を可能にしたことが会員数増加につながったようですが、注目されるのが個人向け。巷でも話題になりましたが、自宅でパンや菓子作りを楽しむ人が増えたといいますよね。そうしたニーズを取り込んだようです。2020年9月期は赤字転落が予想される企業、業績のドン底からの脱出にも期待が織り込まれ…。

4 VEGA(3542・東証マザーズ)

 3位のcottaと同じく、同社もECサイトの運営会社。新型コロナ禍ではオンラインビジネスの強さが目立ちました。同社は、家具・インテリアの通販サイト「LOWYA」を主力としています。その「LOWYA」の3月の受注金額は前年同月比93.9%増と、過去最高を更新するほど好調だったようです。2020年3月期の業績予想は、営業損益で従来予想の1.7億円赤字から1.1億円黒字に上方修正。一転して黒字転換としたことがサプライズに。

5 中央化学(7895・ジャスダック)

 マイナー銘柄だった同社が、月間で株価2倍超に! 新型コロナウイルスによる外出自粛から、思わぬ連想に発展したことがきっかけでした。今回の外出自粛で、客数の落ち込みが深刻な飲食店などがテイクアウトに力を入れていますよね。そうした中食需要が増加すると、必然的に需要が増すのが食品包装材です。大手のエフピコが買われたほか、関連企業の中小型株として竹本容器や同社にも物色が波及。月間出来高921万株は、記録がさかのぼれる1994年以降で同社として最大でした。

5月に注目したい新興株の動き

 大型連休が明けた7日以降、新興株市場はどうなるか?を想像するうえで、気になるのは前月に大きく上昇した反動でしょうか。ただ、4月に大きく上昇したから割高になって買いにくくなったのか?というと、日本のマザーズ市場に関していえば、“そんな野暮なこと考えるだけ無駄”というのが率直なところ。

 マザーズ指数の終値ベースの年初来安値は3月16日ですが、このときのマザーズ指数の予想PERは248倍でした。それが、その後の急激リバウンドを経て、4月末時点では同303倍。どっちにしても超割高であって、「PER250倍なら買いたいけど300倍は買いたくない」なる感覚を持って参加している投資家など皆無でしょう。4月に上がったからといって、ファンダメンタルズ的に警戒する必要が出てきたわけではありません。

 ではなぜ、4月は上がったのか? 何かマザーズが良くなったのか?…一切そんなことありません。まともな機関投資家が、他人の資金の運用に新興株を積極的に取り入れたいと思っているとは到底思えません。

 それでも上がるときは上がる、これが株であって、そういう機運が生まれてしまえば、急に地合いなんて良くなるもの。その機運が生まれたきっかけは、「緊急事態宣言」だったように思います。事実、マザーズがパフォーマンスで他の指数を圧倒し始めたのは、緊急事態宣言発令と同タイミングでした。

 数ある個別株の中で、(今の環境下に限れば…ですが)マザーズ銘柄に優位性が生じる理由はいくつか挙げられます。まず、新型コロナウイルスの影響により下方修正が相次ぐなか、(1)そもそも割安株が極めて少ないため、下方修正で割安感が後退するといった感覚が皆無、というのが東証1部などとの違いでしょう。そして、下方修正と合わせて減配リスクが指摘されるなか、(2)そもそも高配当株が極めて少なく、減配リスクと無縁、でもあります。

 また、GW明け後に決算発表ラッシュとなりますが、ほとんどは3月決算企業の本決算です。先に決算発表済みの大企業でも、今期予想「未定」が相次いでいます。

 見通しが開示されない銘柄への投資の消極化が予想されるわけですが、(3)3月決算企業の比率が低い、というのもマザーズの特徴です。東証1部銘柄の約7割が3月決算企業ですが、東証マザーズ銘柄は約3割。マザーズでは、13日~15日が決算発表のピークですが、主力級では13日発表のそーせいは12月決算企業ですし、14日のメドレーも12月決算。15日のフリーは6月決算で、3月IPO銘柄で活況となったサイバーセキュリティクラウドも12月決算です。

 それぞれ、決算発表の前後では材料になるでしょうが、あくまで短期の決算プレー。新興株市場全体の趨勢としては、緊急事態宣言が5月末まで延長になったことのほうが大きく、個人投資家の売買活発化がもう1カ月続くことのメリットを受ける可能性が出てきました。

 マザーズ銘柄は“流動性が命”です。不要不急の分析は必要ありません、モメンタムが生まれたら、そのモメンタムが生きているかどうか? を日々探るのみです!

 では、何を見ればいいか? となると、チャート分析ではなく、「売買代金の絶対額」だけです。売買代金は嘘をつかない数字、これが高水準というのはお金が回っている証だからです。その目安としては、「マザーズの1日の売買代金1,000億円以上」で良いと思います。今年の年初来の1日当たり売買代金の平均が963億円です。売買代金の金額別で調べてみると、以下のようになります。

  1. 売買代金800億円未満 27営業日(上昇11、下落16) 騰落率平均▲0.12%、
  2. 売買代金800億円~1,000億円 33営業日(上昇14、下落19) 騰落率平均▲0.65%
  3. 売買代金1,000億円以上 20営業日(上昇13、下落7) 騰落率平均+0.77%

 売買代金が1,000億円以上あれば、何かが売られても、何かが買われる状態になっているはずです。例えば、4月のリーディングストックになったアンジェスが売られても、何かに資金シフトが起きれば1,000億円以上をキープできるはずです。

 仮に、日経平均株価が急落し、アンジェスを売った資金で「日経平均レバレッジETF」に資金シフトが起きるような展開になると、マザーズのモメンタムは失われ始めるでしょう。そういうことに弱いのがマザーズ。そもそも、質の高い市場ではないため、急にマザーズが良くなったわけではない…そこだけを理解し、割り切って付き合うには、今のマザーズは魅力的な投機の機会を提供してくれるはずです。