米シェール革命が、原油急落の主因

 原油需給がどう変化し、原油価格がどう動いてきたか、もっと長い年月で解説します。

WTI原油先物(期近)の動き:2014年1月2日~2020年4月3日

出所:シェールオイル生産コストは楽天証券経済研究所の推定

 原油価格は、世界の原油需給のバランス変化によって動いています。需要は年々安定して増加していますが、供給はさまざまな要因で増えたり減ったりします。その結果、原油は供給過剰や、需要過剰になって、乱高下しています。
 グラフ中の<1>から<7>の動きを、以下に説明します。

【1】2014年に原油価格が急落
 2013年まで原油の世界需給は、日量50万バレルの需要過剰でしたが、2014年に日量90万バレルの供給過剰になったため、原油価格は急落しました。米国でシェールオイルの生産が拡大したことが、供給過剰を招きました。

【2】2015年後半に原油価格が再び急落
 2014年の原油急落で、米国のシェール油田でコスト割れが増えました。2015年前半は、シェールオイルの生産が減る思惑から、原油が反発しました。しかし、15年後半は中東原油が増産され、供給過剰が日量2百万バレルまで拡大したために、原油価格が再び急落しました。高コストの米シェール油田は廃業に追い込まれたものの、低コストのシェール油田が増産したために、シェールオイルの生産はあまり減りませんでした。

【3】2016年に原油価格が反発
 米シェールオイルの生産がようやく減り始めたこと、OPECが減産に向けて話し合いを始めたこと、世界需要が順調に拡大したことを受け、原油需給が徐々に改善に向かい、原油価格が反発しました。11月にOPEC+ロシアが減産で合意すると上昇に弾みがつきました。

【4】2017年後半~18年9月まで、上昇継続
 世界景気回復で、原油需要が順調に拡大する中、OPEC+ロシアの減産が続けられたため、需給がしまり、原油価格が上昇しました。
 2018年5月8日、トランプ米大統領が、イラン核合意から離脱し、イランへの経済制裁を再開すると表明したことが、原油先物がさらに上昇する原動力となりました。米国は、11月までにイランからの原油輸入をやめるように一方的に宣言し、イランと取引する企業に制裁を課すことを示唆したため、イラン原油の供給減少懸念が強まりました。

【5】2018年10月以降、急落
 イラン産原油禁輸の適用除外に、日本など8カ国が指定されると、原油先物は急落しました。中国景気減速、米シェールオイル増産も、売り材料となりました。

【6】2019年に、いったん反発
 米中通商協議が、第一段階の合意に進む見込みとなり、米中休戦で世界景気が回復する期待から、世界的に株高となり、原油先物も上昇しました。

【7】2020年に暴落
 コロナ・ショックに加え、OPEC・非OPECの減産に向けた協議が決裂したことを受け、原油先物は暴落しました。