4月に入り原油先物が急反発。2018年以降の原油の動きをレビュー

 年初から一時3分の1まで暴落したWTI原油先物ですが、4月に入ってからは急反発しています。4月3日には1バレル28ドル台を回復しました。これを好感して、今度は資源関連株が上がり、NYダウも反発しました。原油安→株安、原油高→株高の反応が定着しています。
 この反発は続くでしょうか? それを考える前に、まずは、2018年以降の動きをレビューします。

WTI原油先物(期近)の動き:2018年12月末~2020年4月3日

【1】2018年1~10月:上昇トレンド

 世界景気が好調であったこと、OPEC(石油輸出国機構)諸国の減産が続いていたことから、2018年は10月まで原油価格の上昇トレンドが続きました。米国がイランへの経済制裁を再開し、2018年11月からイラン産原油の禁輸を実施すると宣告していたため、11月が近づくにつれ、イラン産原油の供給減少懸念から、投機筋の買いが続きました。トランプ米大統領が、イラン産原油の禁輸に違反する企業に重い制裁を課すことを示唆していたため、供給不足懸念が強まりました。

【2】2018年11~12月:急落
 ところが、実際に11月になると、米国は、イラン産原油禁輸の「適用除外」に、日本を含む8カ国・地域を指定しました。この発表を受けて、原油は急落しました。それに加え、中国景気悪化で中国需要が減速する思惑も出て、原油の下げ材料となりました。また、米シェールオイルの増産が続き、米国の石油在庫が増加してきたことも、売り材料となりました。

【3】2019年1~12月:反発
 米中通商協議が合意に達する期待が広がり、貿易戦争で減速している世界景気も回復に向かうとの期待が出ました。それを受け、原油も買い戻されました。

【4】2020年1~3月:急落
 コロナ・ショックで世界景気が急激に悪化、原油需要が減少する中、3月6日、OPEC・非OPEC共同の原油減産に向けた話し合いが決裂したことを受けて、原油価格は急落しました。減産に向けた協議がまとまらなかったため、減産は3月末で失効。4月1日よりサウジアラビアは2割以上の増産を行います。

 ロシア・米国は、減産継続を目指し、サウジに協調を呼びかけているものの、現時点でサウジの決意は固く、増産を強行する見込みです。サウジはこれまで、OPEC・ロシアの協調減産で中心的役割を果たしてきました。ところが、サウジが減産している間に米シェールオイルの増産が続き、2019年には米国がサウジを抜き、世界最大の産油国となりました。
 これに業を煮やしたサウジは、今回は原油を急落させることで、米シェールオイル潰しを狙ったと考えられます。実際、原油急落で生産が継続できず、破綻に追い込まれるシェールオイル業者も出始めています。

 そうした中、4月2~3日、原油先物が急反発しました。トランプ大統領が出したメッセージがきっかけとなりました。トランプ大統領は、サウジ・ムハンマド皇太子と電話協議したと明かし、サウジとロシアがそれぞれ日量1,000万バレル以上の減産で合意するだろうと期待を語ったことが材料となりました。

 実際に減産が行われるか、真偽のほどはわかりません。ただ、原油があまりに短期的に大きく下がったので、テクニカルに反発が見込まれるタイミングであったことから、反発も大きくなりました。