私は前回のレポート「10年先を見通す投資家が備えるべき10大テーマ」(2020年1月10日付)で、2020年代の政治と経済の構造、テクノロジー、地球環境を複合的に10テーマに分けて考えました。多くの魅力的な展望がある一方、米国主導のブル(強気)相場が既に10年も続いているため、今後に起こりうる下落相場に対し、「備えあれば憂いなし」の視点を優先しました。

 今回はその後編として、これからの10年に、投資家が活路を見出すための10の指針を考えます。

前回取り上げた10テーマ

 将来予測では、「暴騰か暴落か」「覇権か破綻か」「すわ戦争か」など、白黒極端なものが目をひきます。しかし現実には、白黒より、その中間経路をグレーの濃淡程度の違いでたどる道筋の方がはるかに広いものです。前回のレポートでは、耳目を集めそうなびっくり論ではなく、ありうると実感できる事象を、以下の10テーマにまとめました。

1 米国の相対的地位の低下
2 欧州の「日本化」と統合の軋(きし)み
3 自由主義国の民主主義の混迷
4 制御を超えるテクノロジー
5 中国の増長と米国の先鋭化
6 世界を分断する米中システム
7 新興国が成長センターとして再浮上
8 地政学リスクがリアルな危機に
9 地球環境と国際関係のひび
10 秩序ある日本の持続性をチェック

 米国経済の世界シェアは低下し、2030年前後に中国に追い抜かれそうです。衰退を感じる米国は中国叩きを先鋭化させ、中国はIT、AI(人工知能)を駆使した独自路線を進め、米中システムが並存する時代に向かいそうです。

 テクノロジーは、飛躍的な成長分野である一方、人類が適切に制御できるかどうか、悩ましい段階に至るかもしれません。また新興国が成長センターとして再浮上し、先進国を凌駕(りょうが)していく見込みです。

 世界の勢力図の変化、欧米民主主義の混迷、地球環境の変化で、国際関係はギスギスし、地政学問題もリスクにとどまりにくくなる恐れがあります。

 また、高齢化日本は、便利さを後退させながらも、秩序ある社会を保ちそうですが、その持続性を震災などによって突然脅かされるリスクを排除できません。