4つの貴金属の値動きを比較!プラチナは有事でも動じず

 以下のグラフは、セミナーの内容を補足するものです。4つの貴金属の値動きについて、リーマン・ショック(2008年9月)直後の安値水準となった2008年10月を100として比較しています。

図:4つの貴金属の値動きの比較(2008年10月を100として指数化)

出所:マーケットスピードⅡおよびCME(シカゴ・カーマンタイル取引所)のデータをもとに筆者作成

 上記のグラフの直近(2020年1月14日)の値は、パラジウムが1,050、金が217、銀が183、そしてプラチナが120です。これらを言い換えれば、それぞれの2020年1月13日の価格は2008年10月に比べて、パラジウムが10.50倍、金が2.17倍、銀が1.83倍、プラチナが1.20倍になったということです。

 同期間で、パラジウムは10倍近くになり、金は2倍強、銀2倍弱に上昇した一方、プラチナの上昇は1.20倍にとどまっています。

 プラチナは、上昇率が比較的低いため、現在の値位置が“新しい時代のスタート地点”に近く、かつ、リーマン・ショック後もその値位置を大きく底割れすることなく、長期的に底堅く推移してきたわけです。

 数年や数十年かけて収益を狙う長期投資という観点で、プラチナには、金や銀、パラジウムにない魅力があると思います。個人投資家の皆様も、同様のことを感じているのだと思います

また、プラチナは以前の「プラチナ安値圏、パラジウム史上最高値。長期的に貴金属に投資するなら?」で述べたとおり、2015年10月にドイツの自動車大手フォルクスワーゲンが環境規制を違法に逃れてきた問題(以下VW問題)が発覚したことで、特にディーゼルエンジンを搭載した自動車の製造が落ち込み、それによってプラチナの消費が大きく落ち込む懸念が生じました。

 しかし、実態としては、自動車の排ガス浄化装置に用いられているプラチナの消費量が急減している事実は、今のところ確認されていません。

 上記のレポートで一部触れましたが、排ガス規制の強化によって自動車1台あたり排ガス浄化装置向け消費が増加しているとみられること、排ガス浄化装置向け部品を製造する会社において、コスト面で同装置に使用する貴金属をプラチナからパラジウムに代替する大きなメリットが期待できないとみられることが(プラチナ価格はパラジウム価格のおよそ半分であり、素材の調達の面でプラチナの方が優位)、現在でもプラチナの自動車排ガス浄化装置向け消費が急減していない理由と考えられます。

 VW問題を機に拡大したプラチナの消費減少“懸念”という上値を抑える大きな材料がある中であっても、自動車排ガス浄化装置向けの消費は実際には急減していないこと、生産者や投資家が市場を力強く支えているとみられることなどから、足もとのプラチナ価格は“新時代のスタート地点”という安値圏で、底堅く、推移しているのだと思います。