2つの顔を持つ中国

 中国は、1980年代に社会主義国の体制を維持したまま、資本主義革命を実施しました。その成果で、1980年代以降、高成長国となりました。社会主義に留まった国々(旧ソ連・旧東ドイツ・北朝鮮など)がことごとく経済的に崩壊する中で、中国は社会主義体制の中にうまく資本主義を採りいれて、事実上の資本主義国として高成長しました。

 その結果、中国は、極端な資本主義と、社会主義が共存する異形の大国となりました。社会主義の旧弊は、「計画経済」という言葉に集約されます。何でも国の計画通りに動かそうとするところに、無理が生じています。

 中国は、経済を力ずくで思い通りに動かそうとします。これだけ経済規模が大きくなったのに、いまだに金利や為替を自由化していません。貿易も制約されています。巨額の補助金を活用して、世界の成長市場で強引にシェア拡大をはかってきました。それが、国家資本主義として、米国から批判され、制裁を受けるようになっています。

 中国は、今にも崩壊しそうな計画経済バブルと、世界の成長市場で次々とトップをとっていく国家資本主義の両面を持つ、異形の大国です。計画経済で膨らませた非効率な投資、ゾンビ企業の延命だけ見ていると、今にも中国バブルが崩壊しそうに見えますが、そうとも言えません。

 民間経済は、強力なバイタリティーを持って、これからも世界の最先端を席巻していくと考えられます。太陽電池・スマホ・ドローンなど、成長市場で無謀ともいえる大量投資を行い、世界トップの座をとってきたのが中国流です。米国がそれに歯止めをかけようと、さまざまな制裁を打ち出していますが、中国企業が成長市場でシェアを拡大していく流れを簡単には止められないでしょう。車載用電池や半導体、5G、ロボットなどでも大きな投資を行っているので、近い将来、あるいは遠い将来、これらの市場でも中国が世界トップになる日が来る可能性も、あながち否定することはできません。