李克強指数、生産者物価指数に見る中国の実態

 中国景気は、2015年10~12月が大底で、2016年に入ってから回復トレンドに入りました。ところが、米中貿易戦争の影響を受けて、2018年以降、悪化が続いています。それが、李克強指数【注】および中国の生産者物価指数(前年比)の動きに表れています。

【注】李克強指数
中国の李克強首相は、首相になる前の2007年に「中国のGDP統計は信頼できない。鉄道貨物輸送量・銀行融資残高・電力消費の変化を見た方が、実態がわかる」と語ったとされる。その話を受け、鉄道貨物輸送量25%、融資残高35%、電力消費40%の構成で作られた指数。中国経済の実態をよく表していると評価されている。

李克強指数および中国の生産者物価指数(前年比)推移:2007年1月~2019年10月
 

出所:ブルームバーグより作成

 中国経済の実態をあらわしていると考えられる李克強指数を見ると、中国経済がけっこう激しく変動していることがわかります。中国政府が発表するGDP成長率とは異なる、中国景気の実態がここから見て取れます。

中国景気が以下のように推移してきたことがわかります。

【1】2008年にリーマン・ショックで悪化
【2】2009年は巨額(4兆元)の公共投資実施で急回復
【3】その後、徐々に景気が減速。2015年にチャイナ・ショック起こる
【4】2016年以降、景気回復
【5】2018~2019年に入り、米中貿易戦争の影響で景気減速が鮮明に

 中国景気の現状は、中国の生産者物価指数(前年比)からも見てとれます。生産者物価の上昇は、中国経済の体温上昇を示し、下落は体温低下を示します。李克強指数と合わせて見ることで、より中国の景気実態がよくわかります。

 李克強指数が、景気実態をほぼタイムリーに表しているのに対し、生産者物価指数(前年比)は、景気実態にやや遅行します。足元(2019年10月)、李克強指数の低下は一服しつつありますが、生産者物価指数で見ると、前年比マイナスになり、デフレ色が強まっていることが見てとれます。

 私は、中国景気の実態は、李克強指数や生産者物価指数に加え、中国でビジネスを行っている日本企業の声から、判断しています。現在、中国でビジネスを行う日本企業から、中国ビジネス復調の声はあまり聞かれません。ただし、半導体や電子部品など一部企業からは、来年には回復が見込まれるとの話が聞かれます。