2007年以降の中国の景気実態を振り返り

 中国景気の過去の推移を振り返ります。

中国の実質GDP成長率(前年比):2007年1~3月期―2019年7~9月期
 

出所:ブルームバーグより作成

 中国政府の発表ベースでは、2007年以降、中国のGDP成長率は6%を下回ったことがありません。ただし、私は、リーマン・ショック直後の2009年1~3月に、中国のGDPも一時マイナスになったと考えています。世界景気の影響を受けやすい中国のGDPがこんなに安定しているはずがありません。

 リーマン・ショックで一時的に落ち込んだ中国景気は、2009年に中国政府が4兆元(約62兆円)の巨額公共投資を実施した効果で、一気に持ち直しました。中国の公共投資が、世界不況を救ったといわれました。

 ところが、後から振り返ると、この公共投資で膨らんだ非効率な投資が、その後の中国経済の構造改革を遅らせました。手っ取り早く稼げる鉄鋼・不動産・石炭開発などに投資が集中しました。その結果、鉄鋼業などで過剰生産能力を抱え、地方には入居者のいない高層マンション群がゴーストタウン化しました。

 4兆元の公共投資で膨らんだ非効率な投資に足を引きずられ、2010年以降、中国景気はじわじわと悪化していきました。2015年10~12月には、「チャイナ・ショック」と呼ばれるほど中国景気が悪化し、世界景気にもマイナス影響を及ぼしました。

 ところが、中国政府の発表するGDPを見ると、2015年も7%近い成長を実現していたことになっています。そんなことは、あり得ないと思います。チャイナ・ショックがあった2015年10~12月期と、それに続く2016年1-3月期は、中国景気だけでなく、世界中の景気が悪化しました。原油価格急落によって、ブラジル・ロシアなど資源国の景気が悪化しました。米景気も1~3月には、一時的に停滞色が強まりました。日本もこの時、景気停滞期に入りました。こうした現実が、中国のGDP統計にはまったく表れていません。

 2016年後半から、中国景気は盛り返しました。中国だけでなく、世界中の景気が回復に向かいました。中国GDPだけ見ていても、そうした、景気実態はまったくわかりません。中国の実態を知るには、他の景気指標を見る必要があります。