人生いろいろ 〜ケース別のお金の管理法〜

【ケース1】新入社員A君

 先般大学を卒業し、ある上場企業に就職したA君(23歳)は、65歳になるまで働き、その後90歳までの老後期間を想定しており、老後は現役時代の平均の7掛けで暮らしたいと思っている。彼は、手取り収入の何パーセントを貯めたらよいか。年金は厚生年金のみだとしよう。

 A君の現役期間は42年間で、老後は25年間だ。問題は、厚生年金だ。現在、厚生年金を受け取っている人は、標準家計(専業主婦の妻がいる「昭和な家計」)で6割近い所得代替率(現役時代の所得に対する比率)で年金を受け取っているが、年金支給額は「マクロ経済スライド方式」により、年率1%前後の実質価値が減額され、厚労省が目指すベストなケースで5割の所得代替率が維持される。これはかなり難しそうなので、少々慎重に、現役所得の3割が厚生年金として支給されると考えておこう。

 新入社員では、まだそこまではもらえまいが、現役時代を通算した所得の手取額を毎月40万円、年間480万円と想定する。現在の貯金はゼロだ。老後生活費率を0.7(倍)として、先の公式にあてはめて必要貯蓄率を計算してみよう。

 分子は、0.7×480万円−144万円=192万円だ。分母は、(42/25+0.7)×480万円=1,142万4千円。分子を分母で割ると、約16.8%貯蓄すればいいことが分かる。新入社員の頃も、働き盛りも、リタイア前の時期も、この比率で貯蓄しつつ残りの金額で生活すると、老後は「現役時代の平均」の7掛けで暮らせる。

 現役時代は平均6万7,200円貯蓄し、1カ月33万2,800円で暮らすと、リタイア後は23万2,960円で暮らせることが分かる。

 現在の貯蓄額を考えないケースでは、手取り年収がいくらであっても、16.8%貯蓄すれば老後は「現役時代の平均の7掛け」で暮らせる計算だ。就職したばかりのお子さんがいらっしゃる読者は、「手取りの17%くらい貯蓄できれば、老後は何とかなるはずだ」とお子さんに教えてあげてほしい。

 老後を漠然と心配するばかりだと、手数料が高くて不利な個人年金保険(金融庁も「金融レポート平成27事務年度版」で問題視している)だの、怪しい不動産投資(例えば、海外不動産やワンルームマンション投資の質の悪い物)だのに、引っ掛かりやすくなる。

 A君の初任給はボーナスを月単位にならしたとして、手取りで20万円くらいのものだろうか。16.8%の貯蓄は1カ月あたり3万3,600円だ。

 まずは、個人型確定拠出年金の口座を開き、満額(1カ月2万3,000円)を利用し、後は毎月1万円、ネット証券で投信の積立投資をすることをお勧めしよう。