【ケース2】中堅サラリーマンB氏
先のA君が35歳になったら、こんな感じかという、35歳の中堅サラリーマンB氏を考えてみよう。彼は、30歳で結婚して、翌年息子が生まれた。65歳になるまで働くつもりでおり、少し余裕を見て95歳までの老後に備えたいと思っている。手取り年収は、毎月40万円の480万円まで上がった。これからも上がりそうだが、55歳(役職定年)、60歳(定年から再雇用)を期に下落するので、今後を平均すると、現状くらいだろうと見込んでいる。金融資産は、現在、確定拠出年金3百数十万円と、積立投資が2百数十万円の、合計600万円ある。
現状での必要貯蓄率を計算してみよう。
分子は、0.7×480万円−0.3×480万円−600万円/30年=172万円だ。分母は、(30年/30年+0.7)×480万円=816万円となる。両者を割り算すると、必要貯蓄率は約21.1%だ。
毎月8万円を少し超える額を貯蓄するのは楽ではないが、今、子供が小さく学費が掛からない時代であることを考えて人生の平均と比較するなら、むしろもっと貯蓄を増やさなければならないくらいの状況である。
さて、ここで、600万円を全て内外の株式インデックスファンドに投資していて、200万円損をしたとすれば、どのくらいの影響が出るか。
分子は、0.7×480万円−0.3×480万円−(600万円−200万円)/30年=178.7万円(少数第二位を四捨五入)。分母は変わらず、816万円なので、新たな必要貯蓄率は21.9%となる。40万円に対して、毎月8万4,400円の貯蓄を、8万7,600円に増額するとこの損はおおむね吸収できるということだ。
判断は人によるが、「これくらいなら、大丈夫だ」と思う人が多いのではないか。
なお、リスクを評価するための簡便法としては、想定最大損失額の200万円を、老後の月数「360」で割り算して「毎月取り崩せる額が5,555円減るのか」と評価することもできる。この額がどれくらい重大なのかは、日頃の所得や、現在の資産額などによって、人それぞれだろう。
【ケース2’】B氏は息子を私立学校に進められるか?
先のB氏はかわいい息子の将来のことを考えている。例えば、息子を、私立の中・高・大と進学させることは可能だろうか。中学、高校にそれぞれ400万円、大学に500万円の、1,300万円が追加的な学費として掛かると想定してみたときに、彼の経済力はこれに耐えうるか。
先の、資産運用による「損」もそうだが、大きな費用は、「現在資産額」を増減することによって、人生設計に反映できる。
早速、私立進学の学費である1,300万円をB氏の家計に反映してみよう。
分子は、0.7×480万円−0.3×480万円−(600万円−1,300万円)/30年=215万3,333円、分母は先と変わらず816万円なので、割り算して必要貯蓄率を求めると約26.4%となる。
これは、不可能ではないが、「いささか苦しい!」と思う方が多いのではないだろうか。
「しかし…」とB氏は考えた。「我が社には、退職金があるのではないか、それに、妻も10年くらいパートで少し働いてもいいのではないか」。
退職金を1,500万円、妻のパート収入を年間100万円×10年で合計1,000万円としてみよう。
公式の分子は、0.7×480万円-0.3×480万円−(600万円−1,300万円+1,500万円+1,000万円)/30年=132万円だ。分母は816万円だから、必要貯蓄率は約16.2%となる。「これなら、行ける」と思える方が多いのではないか。