当口数投資と比較すると

 別の比較対象を考えよう。「等金額投資」であるドルコスト平均法としばしば比較されるのは「当口数投資」(たとえば一定の株数の株式や一定口数の投資信託を定期的に買い付ける方法)だ。これは、株価や基準価額の変化によって投資金額自体が変わってしまうので、正確な比較とは言い難いが、この場合、結果の良し悪しを決めるのは、時系列リターンの自己相関だ。

 株式を例に、配当を無視して大まかにいうと、株価が上がった(下がった)後に株価がより上がり(下がり)やすくなる傾向を持つ場合にはリターンの時系列の自己相関はプラスであり、逆の関係がある場合はマイナスだ。

 時系列リターンの自己相関がプラスになる場合はより「順張り」的になる等株数投資が有利であり、マイナスになる場合は相対的に「逆張り」的になるドルコスト平均法が有利だ。現実の株式の時系列リターンの自己相関はどうなのかというと、これは、ほぼゼロであり、安定的なプラス・マイナスの傾向はない。

 筆者は、「ドルコスト平均法が、『有利』な方法なのではない」ということを説明した。

 身も蓋もない言い方で恐縮だが、ドルコスト平均法は「平均買いコスト」に投資家の視点を集中させることで、投資対象が値下がりした時の「気休め」をあらかじめ提供している投資方法なのだ。

 だが、筆者はここまで「ドルコスト平均法が悪い」とまでは、言っていない。「投資家の気休めになるなら、ドルコスト平均法はいい方法だとしておく方がいいのではないか」と思われる読者がいるかもしれない。特に、金融機関のセールスマンは「そういう事にしておいてほしい」のではないだろうか。