ドルコスト平均法で起こりうる弊害

 筆者も、ドルコスト平均法に従う投資が、積立投資のルールとして実行しやすいことの長所を認めなくはない。ただし、これは、一定間隔・一定額での積立が貯蓄・投資として実行しやすいルールだというだけで、既に投資した投資対象のリスクが低下するというような投資上の「有利」をもたらすものではない。

 問題は、有利でないものを有利だと過大評価すると弊害の可能性を見落とすことだ。投資家にとって害となり得るケースを説明しよう。

 ドルコスト平均法で起こりうる弊害をまとめると以下の3つだ。

1:機会損失の発生
2:支払い手数料の増加
3:一つの対象に対する集中投資によるリスク増加

 順に説明しよう。

1:機会損失の発生

 1番目の弊害として、ドルコスト平均法による投資は、十分な運用資金がある場合に、機会損失につながることがあることを挙げよう。

 勘のいい読者は、先の120万円の一括投資と比較した場合の、毎月1万円ずつ10年間で120万円投資するケースのばかばかしさに気づかれたのではないかと思うが、「将来は不確実でリスクがあるとしても、リターンは有利だと思って投資する」という理由で投資するのだから、その時点時点で、投資家が自分にとって最適だと思う金額を投資している状態が意志決定としてはベストなのであり、ドルコスト平均法によって、この状態の達成が遅れるなら、その間の投資金額不足は、機会損失として理解すべきだ。

 もちろん、その間、当初の平均的な予想と異なって、株価や基準価額などが大幅に下落することはあり得るが、それは、結果論であって、意思決定の正しい評価法ではない。