ドルコスト平均法の比較対象は何か?

 有利とか不利とかを論ずるためには、比較の対象と評価の基準が必要だ。ドルコスト平均法に対する比較対象は何が適当なのだろうか。

 一つの候補は、期初の一括購入による投資だろう。たとえば、12万円を投資するのに、年初に一度に12万円投じるか、年初から年末まで毎月1万円ずつドルコスト平均法で投資するかを比較する。あるいは、もっと期間を延ばして、120万円を一括投資するか、毎月1万円ずつ10年間積立投資するかの比較を考えてみよう。支出する金額は同じなので、ある意味で比較の基準はフェアだ。

 しかし、この例について考えてみるとすぐに分かることだが、最終的に支出する合計額が同じだとしても、資金がリスクに晒される「時間」が異なるので、この比較はリスクの点でフェアではない。

 さて、あえて言うなら、運用に関する正しい評価基準は、リスク当たりの超過リターンだ。それでは、同じ時点での投資残高に対する比率で見たリスクとリターンがどうなのかと考えると、これは、同じ投資対象に投資しているのだから、明らかに同じだ。

 つまり、どのような買い方をしたとしても、同じ対象を買う限り、それぞれの時点のリスク・リターンについて有利不利はない、というのが大まかな結論だ。いつ、いくらで買ったものであっても、同じ時点で同じ対象を保有しているなら、保有している金額に対する収益率の動きは同じであり、有利も不利もない。この観点で考える限り、ドルコスト平均法は有利でも不利でもない。

 重要なのは「金額×時間」であり、「時間」は単に「期間の長さ」を指すだけではなく、「時点」の概念も含んでいる。

 大まかに言って、期間全体が下げ相場であれば、一括投資の不利は当然だし、運用期間中の平均投資額が少なくなるドルコスト平均法のリスクが小さいのは当たり前だ。逆に、期間全体が上げ相場なら、ドルコスト平均法は著しく不利になる。

 投資にあって大きな問題は、その時(月)の買値よりも、これまでに積み上がったポジション全体が晒(さら)されているリスクと期待リターンだ。「ドルコスト平均法をやっているので、リスクが抑えられているはずだ」と思っていても、既に買ってしまった株や投信のリスクが小さくなることはない。