投機筋が撤退した4つの理由と、急騰後下落した5つの背景

 サウジ・ドローン事件後、投機筋が数日で撤退した理由は、

【1】生産半減でも、復旧までに時間がかからず、供給ひっ迫は起きない
【2】復旧まで、在庫を取り崩せるので、安定供給ができる
【3】そもそも事件自体に疑惑がある(サウジの自作自演を含め)
【4】散発的に発生する中東情勢を材料視しないことにしている

 などが挙げられると思います。

 事件発生直後、月内(9月中)には生産は復活できるとサウジの要人が発言(【1】に関連)、OECD石油在庫が潤沢に存在する、米戦略備蓄の取り崩しが承認されたと報道があり(【2】に関連)、イエメン(サウジの南に位置)の反政府勢力による犯行声明があったものの実態は不明(【3】に関連)、という状況になり、供給に懸念は生じない、事件の真相が分からない、などから投機筋は、長い期間売買を繰り返す場面ではない、との判断した可能性があります。

 また、これらに加えて、今年に入り、すでにサウジへの別の石油関連施設へのドローンによる攻撃、ペルシャ湾でタンカーへの攻撃が散発的に起きていた(【4】に関連)、こともあり、サプライズ感がない材料、と受け止められ、短期的な売買の繰り返しが長く続かなかった可能性もあります。

 また、瞬間的な急騰の後、下落した背景には、

【1】米中貿易戦争が激化したことで、米中両国の経済指標の悪化が確認されたこと
【2】米欧の航空会社をめぐる関税の引き上げ合戦が始まる可能性が生じたこと
【3】貿易戦争や各種リスクの拡大懸念で、世界の経済成長見通しが引き下げられたこと
【4】【3】により、原油消費見通しが引き下げられたこと
【5】投機筋がその後、売りポジションを増やしたこと

 などが挙げられます。

【1】【2】【3】は、各種市場を覆う全体的なムードを悪化させ、リスクオフ(できるだけリスクを取らないように運用をする、やや消極的なムード)を醸成する、原油相場にとっては間接的な要因です。【4】【5】は原油相場にとって直接的な要因です。直接・間接を問わず、複数の要因が発生し、下落したと考えられます。