瞬間的な急騰・下落は、投機筋の早期退出、景気後退・原油消費減少懸念などが原因

 なぜ急騰が瞬間的だった(長続きしなかった)のでしょうか? 直接的な原因は投機筋の早期退出にあると筆者は考えています。

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出所:CFTC(米商品先物取引委員会)のデータをもとに筆者作成


 
 投機筋の動向を知る上で手掛かりになるのが、CFTC(米商品先物取引委員会)が毎週金曜日の引け後近辺の時間帯(日本時間土曜日の未明)に公表する、投機筋の建玉明細です(いわゆるCFTC建玉明細です)。このCFTC建玉明細は、その週の火曜日の取引終了時点のデータを収録しています。

 サウジ・ドローン事件発生前の9月10日のデータ(9月13日公表)と、事件発生後の9月17日のデータ(9月20日公表)はほとんど変化がありません。事件10日後の9月24日のデータ(9月27日公表)も大きな動きはありませんでした。

 短期的な売買を繰り返して収益を上げることを生業とする性格上、事件発生直後の16日月曜日の瞬間的な急騰に投機筋が関わったと考えられます。

 ただ、投機筋の動きが、投機筋の買いポジションの増加や売りポジションの減少という形でCFTCの建玉明細に表れていないことから、投機筋は、9月14日の事件の報道を見て9月16日に買ったものの、遅くても翌火曜日の取引終了前までに退出していたとみられます。

 つまり、投機筋は“石油関連施設が燃え上がるインパクトの強い映像”と“サウジの生産量が半減したという衝撃的な発言”でも、短い時間(長くて30時間程度?)しか活発な活動をしなかったと考えられます(CFTC建玉明細は毎週火曜の取引終了時点のデータを収録する、週次ベースのデータであるため、月曜日のデータは確認することができません)。

 仮に、投機筋があの事件を受け、短期間の売買で撤退したとすると、その理由は何だったのでしょうか? この点が、現在の原油相場の裏側にある重要な事実であり、なおかつ、今後の原油相場を考える上でカギになると考えます。