素人の難点1:分散投資効果を分かっていない

 普通の個人投資家が個別株への株式投資を行う場合、最大の制約は、資金が小さいので十分な分散投資ができないことだ。質問のケースの場合、せっかく10銘柄に分散されていたポートフォリオを、6銘柄への分散投資に後退させている。これは、ひどくもったいないことだ、と認識しておくべきだ。

 もっとも、投資信託の運用のようなプロの運用の場合も、「銘柄を絞り込んだ方がいい」と考えている人がいる場合もある。筆者の知る限りでも、「筋肉質のポートフォリオを目指せ」などと言って、部下に投資銘柄数の絞り込みを強要した運用会社の役員もいたし、せっかく分散投資ができる投資信託なのに、「厳選された30銘柄に投資する」などと銘柄数を絞り込んでいることを売り物にする幼稚なファンドマネジャーもいた。

素人の難点2:投資ウェイトに無頓着である

 質問のケースで心配なのは、銘柄数の減少もさることながら、投資ウェイトの偏りだ。売却された4銘柄の資金が、値上がり率が高かった2銘柄への投資に向けられているので、これらの2銘柄には合わせてざっと6割くらいの資金が投じられることになっている。これでは、実質的に3~4銘柄程度の分散投資にしかならない。

 実は、同様の難点を持っているファンドマネジャーはプロの世界にもいる。銘柄選択にばかり熱心で、投資ウェイトが、大まかに等金額、あるいは時価総額比をヤマ勘で「てきとう」に変えただけ、というようなファンドマネジャーが案外少なくない。しかし、プロの運用スキルで差が付くポイントの一つは投資ウェイトの調整であり、きめ細かなリスクのコントロール能力だ(複数の質的リスクを量的に把握しつつ調整する)。

 

素人の難点3:狭い範囲で考える

 質問のケースは、4銘柄の売却を不問に付すとしても、売却した資金を、すでに持っている銘柄に対して再投資しようとするところが良くない。世の中には数多くの投資可能な銘柄があるのだから、自分の手持ち銘柄以外の銘柄に投資対象を求めた方がいいことが多い。リターンの追求可能性の点でもそうだし、リスク分散の点でもいえることだ。

 この点に関しても、共通の難点を持つプロはいる。たとえば、アナリストが調査対象としている銘柄群のみを「投資ユニバース」として、この中の銘柄にしか投資しないと決めて自らを制約している運用会社などは、会社丸ごとで不合理な罠にはまっている。