英国民がEUからの離脱を望むのはなぜか?

 英国民がEU離脱を望むのには、3つの理由があります。【1】移民難民に対する不安、【2】EU・ドイツへの反感、【3】経済的に弱いEU加盟国を支えなければならないことへの不満です。最大の不満は、EU経由で移民難民が流入してくることです。移民によるテロが起こるたびに、不満はエスカレートしています。

【1】EUからの移民流入を規制できないことへの不満

 EU内は自由に人が行き来できるようにルール(シェンゲン協定)が定められています。その結果、2000年代以降にEUに加盟した東欧諸国から、英国・ドイツなど西側諸国へ移民が増えています。近年は、トルコ・ギリシャ経由でシリア難民の流入が増えています。英国は、EU外の国(シリア)から直接イギリスに難民が入っていることは規制できますが、一旦EU加盟国に入国を認められると将来EU経由で難民がイギリスに流入することを防げないとの懸念があります。英国には、年25万人程度の移民が流れ込んでいますが、その約半分がEUからの移民です。

 移民は低賃金の労働者となり、英国経済を支えてきたが、最近は、移民増加のペースが高まったことにより、英国の低賃金労働者と競合が起こっています。さらに最近、欧州および米国で、移民が引き起こす犯罪やテロが問題化していることも影響して、英国を含め、欧州各国で反移民運動が広がっています。

【2】EU・ドイツへの反感

 英国には、大陸欧州に先んじて市民革命や産業革命を遂行してきた歴史があります。誇り高きイギリス人の言葉の節々に、EUを実質的に支配するドイツへの反感が見え隠れしています。

 離脱強硬派の主張には、「EUに支配されない真の独立を勝ち取ることが重要」、「EU残留を可決することは、EU官僚に対し無条件降伏を表明するのと同じ」、「EUが国家を超えた国家としてイギリスに君臨するのを許すな」など、感情的な表現が混じることがあります。EUをドイツに置き換えると、その意味するところがわかります。

【3】EUに取られる巨額の負担金に不満

 EU運営に必要な予算に対し、EU各国に負担が割り振られています。負担は、経済力の強い国が大きく、経済力の弱い国が小さくなる仕組みです。ドイツがもっとも大きな負担金を出しています。英国は、オランダ・フランスなどと並び、大きな負担金を強いられています。EUから離脱すると、負担金を免除されるので、離脱派はそのメリットを訴えています。

 EUはこれまで、ギリシャ支援に巨額の資金をつぎ込んでいます。ギリシャだけでなく、ポルトガル・スペインなど、EU内には、対外債務の大きい国が多数あります。英国民は、EUの低信用国を支えるために、英国の税金が使われることに、納得できないと考えています。