金融教育もなければ睡眠教育もない日本。睡眠負債、どう返す?

 筆者の本業はエコノミストですが、副業で睡眠健康指導士(一般社団法人 日本睡眠教育機構の認定資格)として活動しており、セミナーや相談を受けることもあれば、地方自治体の健康観光や健康長寿プロジェクトのレポート作成に関わることもあります。

 発信する側だけではなく、研修や意見交換を通じて、臨床医や研究者などの専門家から話を伺う機会もありますが、多くの方が、“睡眠教育の不足”を指摘されています。欧米では、医療系だけではなく教育学の課程でも睡眠について学ぶ一方、日本では、教師はおろか看護師や保健師でも十分な睡眠教育を受ける機会がないことを危惧され、教育内容の改善に向けて活動されている大学教授もいます。

 近年、「睡眠負債」が脚光を浴びていますが、1990年代後半には研究が盛んに行われていたそうです。睡眠負債の注目を受けて、“睡眠負債をどう返すか”、あるいは極端な場合だと、“睡眠負債を抱えていてもパフォーマンスを発揮する”ことを謳ったビジネスがありますが、そもそもは、「“睡眠負債は気づきにくい”、“睡眠負債が蓄積すると様々な疾患のリスクが高まる”、だからこそ、“日々の生活で睡眠負債を抱えないようにする”が重要なメッセージだったのに、曲解している人がいる」と苦言を呈される医師もいます。

 このような現象は、老後2,000万円不足の報道以降、SNSなどで怪しげな金融商品や投資勧誘の広告が増えたことと似ているかもしれません。まれに投資の世界でも睡眠の世界でも、常識や常道では説明できない方がいることは事実ですが、そうした方法を真似るのはリスクが高いと考えた方が無難です。

 それにしても、金融・投資も睡眠も自分で学ばねばならず、かつ、企業からは高い専門的な技術を求められるという、本当に大変な時代になりました。