睡眠不足で“大損”している日本人。経済損失は年15兆円!?

 健康と言っても様々な切り口がありますが、国際比較でも、そしておそらく、多くの方の実感からしても、日本人の睡眠不足は深刻なレベルです。世界的に有名なランド研究所が2016年に発表した ”Why sleep matters — the economic costs of insufficient sleep A cross-country comparative analysis” (なぜ睡眠は重要か 睡眠不足による経済損失の国際比較)では、睡眠不足による、「死亡率上昇がもたらす労働人口の減少」、「パフォーマンス悪化による経営効率低下」(含む、睡眠不足に起因する病気休業)、「若年期の学業不振・能力開発への悪影響」がもたらすコストを推計しています。

 あくまでも推計値で幅はありますが、日本は金額にして、879~1,386億ドル(1ドル110円換算で約9兆6,690億~約15兆2,460億円)、GDP(国内総生産)の1.86~2.92%が1年間(!)で失われており、GDP比で見ると、米国、英国、ドイツ、カナダと比べて損失の割合が最も大きくなっています(2015年)。

 他の数字と比較すると、国の一般会計予算が約100兆円、消費税5%時の税収が約10兆円、2018年度のソフトバンクグループの連結売上が9兆6,022億円、ホンダの連結売上が15兆8,886億円ですから、睡眠不足による経済損失がどれだけ大きいか分かります。

出所:RAND Corporation ”Why sleep matters”より筆者作成

 睡眠不足は各国の文化が影響している可能性があり、農耕民族・儒教文化圏の日本や韓国の睡眠時間が短いことが知られています。また、労働法制の影響もあり、勤務間インターバルを採用しているEU(欧州連合)諸国では出勤まで11時間以上の休息時間を設けることが法律で義務付けられています。

 日本もこの4月から勤務間インターバルが導入されましたが、あくまでも事業主の努力義務のため、会社ごとの取り組みに差があるのが現状です。