相場変動時の安全資産は金?円?

 世界最大のヘッジファンド、米ブリッジウォーター・アソシエーツの創業者レイ・ダリオ氏が、7月に金への投資を「推奨」しました。

 一方で、米ゴールドマン・サックスが7月に顧客向けに発信したリポートが金融市場で話題になっています。このレポートでゴールドマン・サックスは「相場ショック時のマネー逃避先は金より日本円が有利」と推奨しているからです。金よりも日本円の方が有利な理由についてゴールドマン・サックスは、金を買う権利(コール・オプション)の価格が、円を買う権利の価格に比べて割高になっていると指摘し、円が相対的に割安であり、有利と説明しています。

 このゴールドマン・サックスの推奨については、全く違和感がありません。と言うのは、単純な感覚ですが、円は金よりも「強い」という感覚はずっと持っていたからです。

 それは、金の国際価格(ドル建て価格)と金の円建て価格を比べると、金のドル建て価格は39年前の最高値を既に抜け切っているにもかかわらず、円建て価格は39年前の最高値をまだ抜けていないからです。

 価格を追って説明すると、金は1980年1月につけた当時の最高値1トロイオンス=850ドルを、2000年代に入ってから上抜き、2011年9月には1トロイオンス=1,896ドルの最高値を付けました。ところが、円建て価格は1980年1月の1グラム=6,495円はまだ抜け切っていない状況です(ドル建て、円建ての金価格は田中貴金属工業の価格推移を参考)。

 国内の金価格(円建て価格)はドル/円の為替レートに左右されます。円安に動くと、金の円建て価格は上昇しますが、円高に動くと下落します。つまり、金の円建て価格が、まだ最高値を抜けていないということは相対的に円の方が高いということになります。

 ドル建て価格が1980年1月に850ドルをつけた時のドル/円は240円台です。また、2011年9月に1,896ドルの最高値をつけた時のドル/円は77円台です。

 金は1980年の高値と比べると2011年には約2.2倍まで上昇しましたが、円は約3.1倍の上昇(ドル安)となっています。従って円の方が相対的に金より強いため、この時の国内の円建て価格は約4,700円と、最高値6,495円にはほど遠い水準でした。