シェールオイル増産で2014年に急落した原油は、その後反発したが上値重い

 原油需給がどう変化し、原油価格がどう動いてきたか、もっと長い年月で解説します。

WTI原油先物(期近)の動き:2014年1月2日~2019年6月14日

出所:シェールオイル生産コストは楽天証券経済研究所の推定

 原油価格は、世界の原油需給のバランス変化によって動いています。需要は年々安定して増加していますが、供給はさまざまな要因で増えたり減ったりします。その結果、原油は供給過剰や、需要過剰になって、乱高下しています。

グラフ中の<1>から<5>の動きを、以下に説明します。

<1>2014年に原油価格が急落

 2013年まで原油の世界需給は、日量50万バレルの需要過剰でしたが、2014年に日量90万バレルの供給過剰になったため、原油価格は急落しました。米国でシェールオイルの生産が拡大したことが、供給過剰を招きました。

<2>2015年後半に原油価格が再び急落

 2014年の原油急落で、米国のシェール油田でコスト割れが増加。2015年前半は、シェールオイルの生産が減る思惑から、原油が反発しました。しかし、15年後半は中東原油が増産され、供給過剰が日量2百万バレルまで拡大したために、原油価格が再び急落。高コストの米シェール油田は廃業に追い込まれたものの、低コストのシェール油田が増産したことで、シェールオイルの生産はあまり減りませんでした。

<3>2016年に原油価格が反発

 米シェールオイルの生産がようやく減り始めたこと、OPECが減産に向けて話し合いを始めたこと、世界需要が順調に拡大したことを受け、原油需給が徐々に改善に向かい、原油価格が反発。11月にOPEC+ロシアが減産で合意すると上昇に弾みがつきました。

<4>2017年後半~2018年9月まで、上昇継続

 世界景気回復で、原油需要が順調に拡大する中、OPEC+ロシアの減産が続けられたため、需給がしまり、原油価格が上昇しました。

 2018年5月8日、トランプ米大統領が、イラン核合意から離脱し、イランへの経済制裁を再開すると表明したことが、原油先物がさらに上昇する原動力に。米国は、11月までにイランからの原油輸入をやめるように一方的に宣言し、イランと取引する企業に制裁を課すことを示唆したため、イラン原油の供給減少懸念が強まりました。

<5>2018年10月以降、急落

イラン産原油禁輸の適用除外に、日本など8カ国が指定されると、原油先物は急落。中国景気減速、米シェールオイル増産も売り材料となりました。