「良いFP」とは?

 私事で恐縮ながら、筆者は今年から「FPの学校」という名前のプロジェクトに関わっている。正直なところ「FP(ファイナンシャル・プランナー)」という資格の有無はアドバイスの能力に殆ど関係ないと思っているので、より一般化して「金融アドバイザー」とでも呼ぶ方がいいのかも知れないが、「FP」の方が一般的な呼称としてポピュラーなので、この名前にした。

「FPの学校」の目的は、「良いFP」を育てることだが、筆者が考える「良いFPの条件」は以下の3つだ。

1 正しくて十分な知識によってアドバイスを行うこと
2 利益相反の問題のないクリーンなビジネスを行うこと
3 FPビジネスで十分な収益性を確保できること

  である。

 簡単に補足すると、

1 正しくて十分な知識によってアドバイスを行うこと

多くのFPの知識は上級資格の保有者でも不十分である場合もあるので、まずこの点を補わなくてはならない。

2 利益相反の問題のないクリーンなビジネスを行うこと

FPを名乗って顧客にお金のアドバイスをする傍らで、生命保険を売って保険会社から報酬を貰うようなFPのビジネス・モデルは、アドバイス業務と商品販売の間に利益相反を抱えておりクリーンだとは言えないと筆者は考えている。

3 FPビジネスで十分な収益性を確保できること

FPがアドバイスの質を保ちビジネスを続けるためには、ビジネスのやり方に工夫が必要だ。一顧客の獲得と接し方に加えてサービスの提供の仕方、つまりFPビジネスのやり方に工夫が必要だし、アドバイスの基礎になる情報の収集や分析に関してもっと能率を上げる工夫がないと時間当たりの生産性が上がらない。

   3つの条件は相互に関係しているし、FPの業務は広い範囲にわたる。筆者が全てをカバーできるわけではない。保険、不動産、FPビジネス、システムなど、それぞれの分野に詳しい方と協力しながら、内容を作りつつある。

 さて、このプロジェクトの中で、筆者は、「金融資産の運用について顧客にどうアドバイスをしたらいいのか」という部分を担当している。限られた持ち時間と、バックグラウンドとなる知識にバラツキのある受講生という難しい条件の中なのだが、伝えるべき内容について考えてみた。

「基礎知識+問題+解説」に  

 正直に言うと、筆者は当初、本稿で紹介するプログラムと全く異なる構成のプログラムを考えていた。前半に基礎となる運用周りの金融知識を一気に詰め込んで、後半に具体的な応用ケースを設定して、後半は受講生に考えて貰うような形式だ。

 しかし、このスタイルだと、前半の基礎編の内容が膨大なものになり、受講生によっては負担が大きすぎる。また、後半の話を受講する際に前半の内容を覚えて置いてもらわなくてはならない。

 セミナー経験の豊富な仲間に相談したところ、構成を変えた方がいいと言われて納得した(率直なアドバイスをくれる仲間を持つことは大切だ)。

 上記のような経緯で改めて考えてみた結果、個人向けの運用アドバイスでポイントや盲点になりやすい箇所を、トピックとしてピックアップして伝え、それを問題に落とし込んで受講生に考えてもらい、さらに説明を補う構成で内容を作ってみることにした。

 以下は、2回の講義用にピックアップした12項目と、ごく簡単な問題例(講義ではもう少し手の込んだ例となる)、問題を考える上でのポイントを補足したメモ書きのようなものだ。

 FPの読者にもFPでない読者にも、個人の金融資産運用について考える際の参考になると幸いだ。