考えよう、12のトピック 4~6

 

4 運用における「部分」と「全体」

 iDeCoやNISAなどの普及によって、個人であっても、運用が複数の口座に跨がるようなケースが増えてきた。  複数口座の運用の考え方は、年金基金などの機関投資家の資産運用で複数の運用会社を使うケースと同様の論理で考える事ができる。基本的には、

(1)全体の合計を最適化すること
(2)個々の部分に最適な運用部分を割り当てること

の、2つのステップで解決できる。

▼問題
会社で行っている確定拠出年金(DC)の運用200万円も含めて金融資産の合計が1,000万円あるサラリーマンがいる。彼はDCの外に、株式に投資する投資信託を400万円、銀行預金に400万円の、合計800万円を運用している。DCでは、「ターゲットイヤー型」と称するバランスファンドで運用しており、そのファンドは目下約50%の株式比率を持っている。彼の運用状態は適切か?

▲ヒントと補足

こういう質問の場合、「適切ではない」という答えになる場合が多いが、理由を考えてみていただきたい。確定拠出年金の運用口座としての性質とともに、資産全体を最適化することを考えると、少なくとも適切ではないことが分かる。  iDeCoやつみたてNISAなどが普及し、こうした制度の利用が増えており、FPとしても、その中での運用商品選択のアドバイスを求められることがあろう。論理的に答えられるようにしておきたい。

 なお、DCの商品ラインナップの中で正解になり得るのは、商品が多数あってもせいぜい2~3本で、それ以外は選ばない方がいいダメな理由がハッキリある商品だ(筆者は「地雷」と呼んでいる)。「ターゲットイヤー型」はその1つだ。

 

5 運用商品評価の一般的方法

 運用商品の選択にあたっては、マーケットで得られるリターンから投資家が得るリターンの差となる「コスト」が重要だ。投資家が得るリターンは

「市場全体のリターン(A)+運用の巧拙によるリターン(B)−コスト(C)」

の合計だが、同カテゴリーの商品群にあって(A)は共通で、(B)は評価不能であり、(C)にはハッキリした差がある。(C)が相対的に劣るものが選ばれる余地はない。

▼問題 

FPであるあなたは、「国内株式に投資するアクティブ・ファンドで、良いファンドを教えて欲しい」と訊かれたとする。どう答えるのが適切か。

▲ヒントと補足

実は、この質問は、ダメなFPを見分けるためのリトマス試験紙的な「引っ掛け質問」の一つだ。 6 個人の資産運用簡便法  前回の本連載で「ほったらかし投資術」と称する個人の資産運用簡便法を説明したが、レクチャー前半のまとめとして資産運用の簡便法を説明する。

要は、次の図を完全に説明できればいい。

 

  説明のポイントは、許容できるリスクを評価して、リスク資産への投資額を決める部分だ。

▼問題

「国内株式」「外国株式」「国内債券」「外国債券」の4資産のインデックスに均等に投資するファンドに、持っている金融資産全額を投資する場合と、上記の図の運用の、実質的な違いと優劣を説明せよ。

▲ヒントと補足

簡便法はこの図の方法に限るわけではないが、顧客の資産運用ポートフォリオとこの簡便法を比較すると、顧客の運用のどこに問題があるかを掴むヒントになる。

例えば、4資産均等は、現状では例えば「国内債券」の部分に明らかな非効率性がある。