裁定残を見ながらトレーディングする際の注意事項

 1つ注意すべきことが、あります。裁定買い残はかなり低い水準まで減少しましたが、裁定残だけで投資判断すべきではありません。裁定残がいくらまで減ったら増加に転じるという明確な法則はないからです。その時々で、裁定残が底を打つ水準は異なります。ここからさらに3,000~4,000億円まで減少することもないとは言えません。

 短期筋の買いポジションがほとんど整理されていることを意識しつつ、ファンダメンタルズ(景気・企業業績)の変化も見ながら、日経平均反転の時期を探っていくことになります。

裁定買い残が3.5~4兆円まで増加すると、減少に転じることが多い

 2007年以降で見ると、裁定買い残が3.5~4兆円まで増加した後、日経平均は反落局面に入っていました。裁定買い残3.5~4兆円は、投機筋の先物買い建てが高水準になっていることを示し、短期的な「買われ過ぎ」を警戒した方が良いレベルです。

日経平均と裁定買い残の推移:2007年1月4日~2019年5月21日(裁定買い残は2019年5月10日まで)

出所:東京証券取引所データに基づき楽天証券経済研究所が作成

 2013~2015年の部分を拡大したのが、以下の図です。

日経平均と裁定買い残の推移:2013年1月4日~2016年1月8日

出所:東京証券取引所グループのデータに基づき楽天証券経済研究所が作成

 今後、日経平均が上昇し、裁定買い残が3.5兆円に近づく時は、短期的な買われ過ぎを警戒すべきです。ただし、裁定残だけで、売りを仕掛けるのは危険です。裁定残がいくらまで増えたら減少に転じるという法則はないからです。過去には、裁定買い残が6兆円まで増加したこともありました。

 

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