本当に消費税を上げると、景気は悪くなるのか?

 1997年4月の消費税増税の際は、7月のアジア通貨危機、そして11月の北海道拓殖銀行や山一證券に代表される金融危機という波乱があり、1997年度の税収は増加したものの、翌1998年度の税収は悪化しました。タイミングが悪かったことは事実で、この時のトラウマが消費税恐怖症になっている面はありますが、これらの危機と消費税の影響を混同して、消費税の影響を過大評価しているように思います。

 

■一般会計税収の推移

出所:財務省「一般会計税収の推移」を基に筆者作成。2017年度は実績見込み、2018年度は予算ベース。

 

 1997年、2014年の経験を踏まえれば、リーマンショック級がなければ消費税増税というシナリオは利に適っています。米中貿易摩擦の激化や、今後の日米交渉の帰趨など不透明感が強まっていることも事実ですが、景気だけではなく、参議院選挙や国会審議といった政治日程、企業側のシステム対応などを考えると、増税を延期した場合、かえって混乱を招きそうです。

 これまでに2度、増税を延期しています。今回分かったように、いたずらに延期した場合、むしろ増税のタイミングを悪化させるというリスクもあります。消費税以外の財源となると、大企業に有利な租税特別措置法を改正したり、累進課税を強化して捻出すれば帳尻は合いますし、そうした税制が理想だと思いますが、消費税による安定財源という方向性とは異なるので、短期的には難しいでしょう。

 かつてイギリスは、GDP比250%と言われるナポレオン戦争の巨額債務を100年かけて返済し、資金調達余力が生まれたことで、二度の世界大戦を乗り切ることができました。第二次世界大戦の借款も返済しています。

 日本は戦争はともかく、首都圏直下型地震や南海トラフ地震のリスクを抱えています。眼前の景気や選挙だけではなく、有事に備えることができるか。50年、100年を見据えた国家運営が試されているように思います。

■消費税増税の延期はあるか?
前編:物価と経済成長と財政運営から考える
後編:財政問題と国債格付けと景気悪化を再検証