トランプショック、景気動向指数悪化で飛び出した増税不要論

 10連休明けから、トランプショックで株式市場も為替市場も揺れています。マーケットだけでなく、日本国内の景気も不安な状況で、内閣府「景気動向指数」が6年2カ月ぶりに「悪化」に下方修正されました。

 2019年1-3月期の実質GDPの成長率(年率)は年率2.1%と思いのほか強い数字になりましたが、内需は振るわず、外需は輸出以上に輸入が減少している心許ない内容です。

「このタイミングで消費税を10%に引き上げて大丈夫か?」という声が強まっています。こうした経済情勢に加えて、「MMT」という聞き慣れない理論を背景にした増税不要論も飛び出し、消費税増税を巡る議論は複雑になっています。

■消費税増税の延期はあるか?
前編:物価と経済成長と財政運営から考える
後編:財政問題と国債格付けと景気悪化を再検証

消費税、タバコ税、国民年金保険料・・・国民の負担を整理

 100ドル札の肖像になっているベンジャミン・フランクリンは「死と税金からは逃れられない」と言ったそうですが、消費税だけではなく、酒やガソリンなど、個々に税金が課せられている品も多々あります。タバコは現在千本当り1万3,244円のタバコ税が課せられていますが、2020年10月1日から1万4,244 円に、2021年10月1日から1万5,244円に引き上げられ、増税率は2年間で15%にもなります。

 こうした商品は購入者が限られていたり(酒やタバコ)、価格変動が激しかったり(ガソリン)、あるいは、そもそもの税負担額を把握している人が少ないので、課税があまり議論になりません。

 また、多くの国民が支払っていて、しかも、じわじわと支払額が増えているのに、国民年金保険料は消費税ほど議論が盛り上がりません。前回、消費税が引き上げられたのは2014年4月。当時の国民年金保険料(2014年4月~2015年3月)は1万5,250円でしたが、2019年4月~2020年3月は1万6,410円と5年間で7.6%上昇しています。

 負担額を比べると、国民年金保険料や厚生年金保険料、国民健康保険料などの家計負担(被保険者拠出)は35.6兆円、消費税は17.6兆円なので、社会保険料の負担額と比べて、消費税は約半分の負担です(厚生労働省「社会保障の給付と負担の現状」、財務省「一般会計税収の推移」(2018年度予算ベース)。