タイミングは悪い。それでも、増税がメインシナリオか?

 さて、これまで述べてきたように財政政策に裏技はないので、毎年の収支を均衡させるよう努力する必要があります。日本の一般政府(中央政府、地方政府、社会保障基金)の債務はGDP比230%を超え、金融資産を相殺した純債務でも150%に達しています。プライマリーバランスも赤字ですし、今後、年金や医療、介護といった社会保障費は増加の一途をたどります。

 経済が成長して税収が増えれば問題ないという意見もありますが、税収増加率を名目経済成長率で割った税収弾性値は1.1程度と言われていますので、一般会計税収約60兆円(2018年度予算)を基準にすると、成長率2%でも1兆円強しか税収は増えません。

 いつまでも異次元緩和を続けることはできないので、金融政策が通常運転になった際は、経済成長率に応じて金利が上昇します。政府債務は1,000兆円を超えているので、金利が1%上昇すると利払いは10兆円増える計算になります。経験則からは、名目経済成長率と国債金利は概ね同じ水準になるので、金利が上昇して、利払い負担に耐えられるよう、なるべく早く財政収支を改善させる必要があります。

 

増税見送りは、日本国債の格付け悪化、金利上昇に影響?

 また、今のところ、国債格付けは落ち着いていますが、消費税増税による税収増を期待した格付けなので、増税見送りの場合は国債格付けにはネガティブな影響をもたらす可能性があります。投機的格付けとみなされるまでには、まだ余裕がありますが、国債格付けの悪化は、企業、特に、金融機関の外国通貨調達金利に影響しかねませんので、注意が必要です。

 消費税を上げると景気が悪くなって、結局、税収が減るという意見がありますが、少なくとも前回2014年4月の引き上げの際は、増税した2014年度だけでなく、2015年度も税収は増加しました(一般会計ベース)。与党幹部や財務省、そして、景気に敏感なはずの経団連や日本商工会議所といった経済団体も消費税増税をメインシナリオに据えているのは、この数字が後押ししていると思います。