アイチーイー

 アイチーイー(ティッカーシンボル:IQ)は「中国のネットフリックス」というあだ名が付けられたストリーミング・サービス(会員制インターネット・ビデオ)の会社です。同社の親会社はバイドゥ(ティッカーシンボル:BIDU)です。

 同社はストリーミング・サービスでは中国最大で、競争相手はテンセントとアリババです。市場調査会社アイリサーチによると中国のストリーミング・サービス市場は2016年から2022年にかけての成長率は年率+34.9%が見込まれています。

 全インターネット・ユーザーに占めるストリーミング・メンバーシップ加入者数は2012年には1.2%に過ぎませんでしたが、2016年には13.2%にまで上昇してきています。

 なお米国のネットフリックスの加入者数は全インターネット・ユーザーの28.1%を占めています。またネットフリックスの年間ユーザー単価は110.5ドルでした。

 米国のネットフリックスの場合、売上高はもっぱらサブスクリプション・フィー(会費)であり、広告は重要ではありませんが、中国ではサブスクリプション・フィーに加えて広告も重要な売上高の柱となっています。

 インターネット・ビデオ広告市場は2016年から2022年にかけての成長率は年率+25.2%が見込まれています。2016年の時点でインターネット・ビデオ広告市場は広告全体の5.0%で、テレビ広告は16.2%でした。2022年には両者の立場は逆転し、インターネット・ビデオ広告は広告全体の9.6%に達する一方、テレビのシェアは7.1%に下がると予想されています。

 米国の場合、多大な製作費を注ぎ込んだオリジナル・ドラマ・シリーズが新規の加入者を獲得するにあたって大変重要な役割を果たします。

 中国の場合、ストリーミング市場は端緒に就いたばかりですが、米国同様、丹念に作り込まれたオリジナル・ドラマが加入者獲得の切り札になりつつあります。

 アイチーイーのオリジナル・コンテンツはドラマ、バラエティー・ショー、リアリティー・ショーなどになりますが重要度ではドラマが果たす役割が最も大きいです。

 同社の放映している全プログラムのうちオリジナル・コンテンツ比率は1割程度です。しかし経営戦略上の重要度という点ではオリジナル・コンテンツは極めて重要です。なぜなら映画・メディア企業が作った外部コンテンツをライセンス導入する場合は、ストリーミング各社平等にそれを取得するチャンスがあるため、落札競争がエスカレートしやすく、長期的に見るとそれは差別化にはならないからです。

 またライセンス・フィーを払って買ってきたコンテンツは、二次利用が厳しく制限されており、マネタイゼーションの機会が限られています。

 これに比べるとオリジナル・コンテンツは(1) まず会員限定でストリーミングする、(2) 非会員の一般視聴者にも無料でストリーミングすることでドラマの魅力をアピールする、(3) そうやって一般視聴者を惹きつけたところで、もう一度会員限定とし、一般視聴者の入会を促す、などの使い方ができるほか、長尺ドラマをショート・エピソードに編集し直し、広告を挿入することもできます。

 さらにドラマの製作の段階からプロダクト・プレースメント(広告主がプッシュしたい商品を、ドラマの中で小道具として使うこと)などによりマネタイゼーションすることも可能です。

 このようなことからアイチーイーは今後コンテンツ費用の3分の1をオリジナル・コンテンツに投入する考えです。これは先行投資額の25%に相当します。現在は準備の関係でオリジナル・ドラマへの支出は予定を下回っていますが、向こう2年くらいの間にそのような高水準の投資額に持って行きたい考えです。

 別の言い方をすれば売上高成長率よりも、コンテンツ費用の成長率の方が高くても構わないと同社では考えています。その理由は、ひとたび同社のストリーミング会員になれば、その顧客はずっと同社の顧客として安定収入が見込めるからです。このようなライフタイム・バリュー(顧客の生涯価値)を勘案した場合、目先は赤字続きでも高品質のコンテンツに投資することを通じてマーケットシェアを獲得する方がより重要な戦略というわけです。

 アイチーイーの第4四半期決算はEPSが予想▲RMB4.79に対し▲RMB4.83、売上高予想66.6億RMBに対し70億RMB、売上高成長率前年同期比+45.3%でした。

 サブスクライバー総数は8,740万人でした。ちなみに去年同期は5,080万人でした。メンバーシップ・サービス売上高は32億RMB(=4.66億ドル)、前年同期比+76%でした。

 広告売上高は22億RMB、(=3.2億ドル)、前年同期比+9%でした。

 第1四半期売上高は予想68.4億RMBに対し、新ガイダンス68億~71億RMBが提示されました。