大統領選挙の結果と投資戦略 そろそろ米国株以外にも目を向けるべき時が来ました

共和党が大躍進

 11月5日に実施された米国の総選挙では共和党大統領候補のドナルド・トランプが勝ちました。それに加えて上院も共和党が過半数を取りました。下院に関してはこれを書いている現地11月7日(木)午後の時点で過半数に必要な議席数218に対し共和党が210、民主党が198と共和党の勝利が濃厚となっています。それが何を意味するか? と言えば共和党が思い通りの法案を成立させることが出来やすいということです。

 トランプが大統領になったあかつきには先ず前回彼が大統領だったときに成立させたTCJA(減税雇用法案)が、あのときは5年間の時限法案だったので2025年末に期限切れを迎えるわけですが、それを恒久化することに着手すると思われます。それと同時に法人税率を15%に引き下げることも盛り込まれると思われます。

ユーフォリア

 株式市場はそれに対する期待から買われています。しかしウォール街の格言に;

 強気相場は総悲観の中で生まれ
 懐疑論渦巻く中で勢いを増し
 楽観論が出始めた頃に成熟し
 多幸感(=ユーフォリア)に包まれた時頓死する

 というのがあります。

 いまは「やったぜ!」、「ほら見ろ!俺様の言ったとおりだろう!?」、「よし、ここから倍乗せでイッパツ勝負したる!」という声しか聞こえてきません。多幸感だらけなのです。

テンプルトン卿の教え

 日本株を誰よりも早く買い日本の素晴らしさを世界に紹介したカリスマ投資家にジョン・テンプルトン卿が居ます。

 テンプルトンは「私は総悲観の極地で買うように心掛けている。株価が割安放置されている理由はただひとつ。それは他の投資家が皆、売っているからだ。それ以外の理由は無い。あなたがバーゲン価格で仕込みたいと思うのなら皆が震え上がっている局面で買わなくてどうする? そして皆がそれっ!と買っているときに売るのは強靭なメンタルでないとできないことだ」と喝破しました。

 いまこれを読んでいる皆さんは、買っていますか? それとも売っていますか?

 もしあなたがいまの局面で大胆な勝負に出ているのであれば、あなたは凡庸な投資家だと思います。

 テンプルトンはテネシー州の田舎育ちで苦学してイェール大学に進学、首席で卒業した後、とびきり優秀な学生だけが得られるロード奨学金をもらってオックスフォード大学に進学します。その英国留学時代に友人と世界一周旅行をし、1930年代に日本にも寄りました。つまり日本がどういう国か「土地勘があった」わけです。

 第二次世界大戦後日本が凄い勢いで復活し始めるとテンプルトンは日本に投資したくてウズウズしたわけだけれど、当時は外貨規制の関係で外国人が日本株に投資したお金を本国に送金することが出来ませんでした。

 1960年代にその送金規制が緩和されたと同時にテンプルトンは日本への投資を開始し、最も高い時でポートフォリオの60%を日本株にしたのです。その時の日本株の株価収益率(PER)は4倍、米国株は19.5倍でした。

 日本の方がアメリカより2倍以上も高い経済成長をしているときに、外人投資家は「日本株は板が薄すぎる」とか「英語での情報がない」という理由で誰もが敬遠していたのです。

 
 私自身はテンプルトンに会ったことは無いのですがワイフは1980年代半ばに東京の地場証券の専務の秘書をやっていたことがあり、「今日、ジョン・テンプルトンというアメリカの紳士がうちの会社に来て専務と三人で新橋の料亭に行ったの。料亭って初めて行ったけれどみんなキモノを着ていて面白いところね。」と家に帰ってきて言いました。「おいおい、それ、凄いカリスマ投資家だぞ」と私が言うと「とってもナイスな方だったわよ」と。

 その頃は日本のPER(株価収益率)がスルスル上昇し始めていたので、テンプルトンは早めに日本株から降り、もう活発には売買していないようでした。

 米国株のPERはいま23倍です。

 世界を見回せば、それよかずっと安いバリュエーションで買える市場などゴロゴロあります。その中でも経済が急成長している国に注目すると良いでしょう。

 そろそろ米国株以外にも目を向けるべき時が来ました。