株価変動による影響

米国発の世界同時株安の煽りを受けた2018年

 2018年、世界同時株安が3度も起きた。2016年11月、米大統領選でトランプ氏が勝利したことで景気の先行き不安が強まり、一時株価が下落するトランプショックが発生したが、減税や財政出動など経済政策への期待感が高まり、株価は上昇に転じた。その後も経済の基調の強さから株価は堅調に推移し、2018年2月まで1年以上に亘り、トランプラリーと呼ばれる上昇局面が続いた。しかし、2018年2月2日、この日に発表された1月の米雇用統計を受けて利上げペースに拍車がかかるとの見方が強まって長期金利が上昇、これに連れてボラティリティインデックス(VIX指数、恐怖指数)が急速上昇し、恐怖感から投機筋の手仕舞い売りが促された。

 空売りも株価下落を助長し、米国発の世界同時株安が発生した。2月5日のダウ平均の下げ幅は過去最大を記録。投資家心理の急速な冷え込みによるリスクオフムードは原油相場にも及び、原油価格は60ドル台後半から60ドル割れまで急落した。

注:各種データよりクリークス作成

 その後、株価は再び持ち直したが、10月に入り、再びVIX指数が警戒水準へと上昇した。タカ派的な米連邦準備理事会(FRB)の方針により、2019年の利上げ回数が増えるのではとの観測が広がり、長期金利が上昇したことが切欠。同時に米中貿易摩擦の長期化、深刻化による中国経済失速への懸念も影響。国際通貨基金(IMF)は中国の経済成長見通しを引き下げた。これらを背景に米株式市場は再び大きな下げとなった。原油相場は70ドルを超えていたが、この10月の世界同時株安以降、ファンドの手仕舞いが加速、先行き不透明感から利益確定の売りを進め、ポジションを軽くした。決算月の絡みも投機筋の手仕舞い売りを助長させた可能性がある。

 年に2度も起きた世界同時株安。これで終わるかと思いきや、クリスマス休暇で市場が閑散とするなか、12月にも株価は暴落した。トランプ大統領とFRBとの対立が深まり、メキシコとの国境の壁を巡る予算対立により政府機関が一時閉鎖、金融市場の危機を察知した米財務長官がメガバンクと相次いで協議したことが市場の不安をさらに煽る格好となり、薄商いのなか、売りが売りを呼んで株価は暴落商状となった。リスク選好度の低下は原油相場にも波及し、ついには40ドル台前半まで値を崩すこととなった。

 前述の通り、原油需給への影響も米国要因が主たる要因だが、世界同時株安は米国から始まっており、その背景も米長期金利上昇や米中貿易摩擦への懸念、米国内のお家事情と株価下落も米国要因がほとんどである。2019年の原油相場も株価と高い連動性を維持する可能性が高く、株価動向には注視すべきだろう。2019年前半は個人消費が堅調に推移して景気回復基調、後半は減税効果が薄れて経済が失速するとの見方があるが、3月1日に交渉期限を迎える米中貿易協議の結果次第となることは必至。2019年は利上げゼロとの見方もあるが、FRBは必ずしも打ち止めを想定している訳ではなく、世界同時株安が再現される可能性もある。

 いずれにせよ、株価との相関が高い状況が続いているので、景気動向はもとより、米国の政策に対する市場の反応には注意が必要である。なお、米中間選挙の年と中間選挙翌年のダウ平均終値の関係性をみると、1996年以降の8回のうち7回が翌年に上昇している。前回ねじれ議会となった2014年から2015年も5.5%の株価上昇となった経緯がある。関係性はどうにも判断し難いが、過去の結果は念頭に入れておいても損はないだろう。