サウジアラビアの産油動向がカギとなる?

 OPECのなかでもサウジアラビアの産油動向に注意を払うべきなのは言(げん)を俟(ま)たない。OPECの産油量のうち実に3割を占め、会合での発言力も大きい。2017年1月からのロシアなど非加盟国も協力する協調減産が始まる前、2016年11月末のOPEC総会で減産合意して以降、サウジアラビアは率先して減産を実施した。油価低迷を是が非でも回避したい表れともとれる。その後、原油価格は上昇カーブを描いていたが、それでもなおサウジアラビアは2018年5月あたりまで日量1000万バレルほどの生産水準を維持した。減産のリーダーシップを発揮した格好で、その甲斐もあり、OECD在庫は順調に減少した。

サウジアラビア生産量(100万バレル/日)
注:IEAデータよりクリークス作成

 5月に米政権は対イラン制裁再開を決め、トランプ米大統領はイラン産原油の供給減を懸念し、OPEC加盟国に増産を呼び掛けた。しかし、即増産に踏み切ることで、均衡しつつある市場のバランスが再び崩れ、せっかく上昇してきた原油価格も再び下落に転じてしまう可能性が高いため、OPECは増産に対して二の足を踏んでいた。しかし、7月からの増産を決定し、その後は生産量を大幅に増やした。原油輸出収入を増やしたい意向ももちろんあるが、米大統領へ配慮して増産を行った格好である。

 増産に転じてからも原油価格は上昇を続け、9月には4年ぶりの高値を付けるに至り、トランプ米大統領からは原油価格が高すぎるとの言明が続いた。9月の会合では新たな政策は見送られたが、油価上昇を抑制すべくサウジアラビアはその後もさらに生産量を増やし続けた。11月には日量1100万バレルを超える生産量となり、2016年の過去最高水準をも上回った。

 サウジアラビアの増産に歩調を合わせる格好でOECD在庫はみるみる増え、ロシアなどを巻き込んで市場均衡の目的のために1年半に亘って実施してきた協調減産の成果はたちまち薄れた。サウジアラビアは、先行きの需要予測からすると供給過剰感解消には日量140万バレルの減産が必要との意向を示した。

 市場均衡というOPECの大前提がある以上、利権を度外視してまでも相応の減産が必要な状況に陥った。しかし、油価高騰を嫌う米国へ配慮するならば、摩擦を避ける狙いからも増産を継続せざるを得ない。この時期には記者失踪事件もあり、国同士の利害と思惑が交錯し合った。ただ、図らずも10月には世界同時株安が起こり、これに連れて原油価格も下げに転じて大きく値を崩したこともあり、12月の総会では2019年1月から日量120万バレルの減産を実施することで合意に達した。当初の意向であった同140万バレルを下回ったのは、大幅な増産に難色を示していたロシアに配慮した格好である。

 増産を求める米国、減産に消極的なロシア、両国との摩擦を避けながらの政策が求められるサウジアラビア。価格下落もあってか、2019年1月の協調減産開始を前に12月から自主的に減産を始め、さらに先々のさらなる減産も示唆していることからも、両国に顧慮している姿が窺える。自国の積極減産でロシアの顔を立てたことで、次は減産による需給引き締まりを理由に米国に気遣った増産を検討する可能性が高い。いずれにしても同国の舵取りには今年も注意が必要である。