「情報と価格のかい離」は今後、原油価格下落時に、下げ幅を拡大させる可能性がある

 先週、サウジの石油大臣が3月にさらに50万バレル減産する方針を示したと報じられました。サウジ単体としては100%を超える減産順守率であるにもかかわらずです。

 一見すると、うまくいっている(と市場が信じ込んでいる)減産を、さらに強化する意思があることを示し、原油価格の更なる上昇を狙う意図があるとみられます。しかし、筆者はそれよりは、サウジが先導し、11カ国全体(あるいは21カ国全体)で減産順守ができていない状態を解消する意図があるとみています。

 つまり、サウジ自身も、減産がうまくいっていないにも関わらず原油価格が上昇している、「情報と価格のかい離」が起きていることを危惧しているのだと思います。

 2018年10月上旬に発生した世界同時株安の際、原油相場も大きく下落しました。下落が始まるまでの上昇期間は、米国による制裁のためイランの原油生産量が減少してきていることに、市場が注目していたことが最大の上昇要因でした。

 しかし、ひとたび下落がはじまると、さまざまな下落要因に改めて注目が集まりました。米シェールオイルの生産量が増加している、米中貿易戦争の影響で世界の石油消費量が減少するかもしれない、など、特に真新しい材料でない材料まで、その時の下落要因として材料視される場面もありました。

 その際、注目されたのが、サウジとロシアが夏場前から進めてきた「大増産」でした。イラン制裁による供給減少を補うため、としながらも、その減少量を大きく上回る増産をしていたことが明るみになり、原油価格の下落に拍車をかけたとみられます。

 つまり、重大な下落要因が消化されずにくすぶっていた場合、いざ原油価格が下落したとき、急に下落要因探しが始まり、そのくすぶっていた下落要因が下落を助長してしまうことがある、ということです。

 OPEC・非OPECが減産を順守できていないことが材料視されていないことは、現在の原油市場が抱える火種だと筆者は考えています。

 今後も、減産を評価する基準に留意しながら、「情報と価格のかい離」がどのように変化するか、注目していきたいと思います。