「OPEC生産量、大幅減」という報道は、減産順守を示すものではない

 では、報じられている「OPEC生産量、大幅減」は、「いつ」「どの国」で起きたことなのでしょうか。

「いつ」は、2019年1月と2018年12月の比較です。「2019年1月は2018年12月に比べて生産量が大幅に減少した」という意味です。2月12日にEIA、OPECが、翌13日にIEAがOPEC各国の生産量のデータを公表しました。このいずれかを参照し、2019年1月が2018年12月に比べて「大幅減」だったとしています。

「どの国」については、OPEC全体です。2019年2月時点でOPECは14の国で構成されていて、「大幅減」はOPEC14カ国の合計が大幅に減少したことを指しています。

 つまり、報じられている「OPEC生産量、大幅減」というニュースは、「OPEC14カ国の1月の原油生産量の合計が、12月に比べて大幅に減少したこと」を指しているわけです。

 減産を評価する際に留意すべき点をまとめた図4のように、現在の減産を評価する上での「いつ」「どの国」についての認識は、減産が守られているかどうかを示す減産順守率を計算する根拠と等しくありません。

 そのため「OPEC生産量、大幅減」という報道が、減産順守を示すものではない点に注意しなければなりません。「OPECの原油生産量が1月に大きく減少したため、減産がうまくいっている」とするニュースがいくつかありましたが、うまくいっていることが減産を順守していることを意味しているのであれば、それは誤りです。

図4:減産を評価する際に留意すべき点

注:クウェートのみ減産基準月は2018年9月
出所:筆者作成

 図4のとおり、減産を正しく評価するためには、減産順守率の計算根拠である、2019年1月と原則2018年10月を比較、その生産量は減産に参加する11カ国のもの、とする必要があります。そのように評価した上で、先述のとおり、OPECの1月の減産順守率は86%だったわけです。

 また、「OPECの減産はうまくいっている」とするニュースは、OPEC14カ国の2019年1月の生産量が2018年12月に比べて日量80万バレル減少したことを基にしている面もあるとみられます。なぜそれが「減産がうまくいっている」となるかと言えば、日量80万バレルという数値は、2018年12月の会合で合意した減産実施時におけるOPEC側の削減予定量の合計とほぼ同じ数値であるためです。

 しかし、減少した日量80万バレルは、2019年1月と2018年12月の比較であり、かつ14カ国合計によるものであるため、減産がうまくいっていることを示すものではありません。

 図5は、2月12日(火)にOPECが月報で公表した各国の原油生産量と、1月18日にOPECのウェブサイト上で公表された現在の減産の合意内容を基に推定した、減産に参加しているOPEC11カ国の減産順守状況です。IEAが公表したOPECの減産順守率86%とほぼ一致します。

図5:減産に参加するOPEC11カ国の1月の減産順守率(筆者推計) 

注:クウェートのみ減産基準月は2018年9月。ベネズエラ、リビア、イランの3カ国は減産に参加しない減産免除国
出所:OPECのデータより筆者作成
単位:千バレル/日量

 個別にみれば、サウジがリーダーとして孤軍奮闘しています。この点は原油相場にとっては上昇要因になり得るとみられます。しかし、生産量2位と3位のイラクとUAEが順守できなかったとみられる点は下落要因と言えます。