米国の大寒波で米シェール生産の伸びが鈍化の可能性あり

 ここ数週間、米国に記録的な大寒波が襲来していると報じられています。米中西部イリノイ州のシカゴの街中に流れる川や、シカゴ周辺の五大湖が凍りついている様子を報じるニュースが目に留まります。

 このような大寒波は、米国のエネルギー事情にはどのような影響があると考えられるのでしょうか。

 暖房のための当該地区のエネルギー消費が増し、これにより該当地区およびその周辺地区の石油製品在庫が減少する可能性があります。また、寒波により当該地区の製油所が稼働停止に追い込まれ、原油在庫が積み上がることも考えられます。

 大寒波の米シェールオイルへの影響は、「生産量の減少」という影響が考えられます。

 EIAの資料から、全米に7つあるシェール主要地区を図6で示しました。

図6:7つの米シェール主要地区

出所: EIAの資料より筆者作成

 7つ主要地区のうち4つは南部付近にありますが、1つは北部にあります。その北部にある地区は「バッケン地区」です。

 バッケン地区は大寒波が襲来している地区の一つ、ノースダコタ州を中心とした地域です。大寒波が原油を生産する作業を停滞させ、同地区の原油生産量の減少が懸念されます。

 バッケン地区の2018年12月の原油生産量は日量140万バレルでした。パーミアン地区(日量380万バレル)、イーグルフォード地区(日量142万バレル)に次ぐ3位でした。12月のシェール主要7地区全体の生産量の合計は、日量805万バレルでした(米国全体のおよそ68%)。

 バッケン地区の原油生産量のシェアは、シェール主要7地区合計の17.3%、米国全体の11.9%です(2018年12月時点)。

 バッケン地区のシェアは決して小さくなく、寒波の影響で同地区の原油生産量が減少した場合、1月と2月の米国のシェール主要地区の原油生産量、さらに言えば米国全体の原油生産量が減少し、これまでの長期的な生産量の増加傾向が鈍化する可能性があります。

 これまでの米国全体および米シェール主要地区全体の原油生産量の増加傾向については、「原油相場の年末下落は米シェールにダメージ?OPECプラスは減産順守できるか!?」で解説しています。ご参照ください。

 寒波が米シェールに与える影響という観点で、2月19日にEIAが公表するバッケン地区の1月の原油生産量に注目したいと思います。

図7:米シェール主要7地区の原油生産量の推移 

単位:百万バレル/日量
出所: EIAの資料より筆者作成

 

「思惑」と「実態」が交錯する原油相場。思惑主導でどこまで上値を伸ばせるか

 今回のレポートでは、海外メディアが報じたデータを基に「OPECの1月の減産の進捗状況」「政情不安が高まるベネズエラの石油に関わる状況」「米国の大寒波が米シェール生産の伸びを鈍化させる可能性」について書きました。

 3つの材料を整理した図8をご覧ください。3ついずれも「思惑」と「実態」、両面を持っていることが分かります。

図8:現在の原油市場を取り巻く材料

出所:各種情報より筆者作成

 繰り返しますが、2月に入り原油相場は上値が重い展開となっています。図8の3つの材料が影響しているため、現在の原油相場が上昇方向にも下落方向にもトレンドが発生していないのであれば、市場参加者は、図8の上昇要因に結びつく「思惑」と、下落要因に結びつく「実態」の両面を意識している可能性があります。

 仮に今後「思惑」を材料として原油相場が反発したとしても、その裏側には下落要因になり得る「実態」が存在し続けている点にも留意が必要だといえます。逆に考えれば、価格反発のきっかけとなることもあると思います。

 原油相場は現在、「思惑」と「実態」が交錯していると言え、固定観念をできるだけ捨て、さまざまな角度から材料を観察していくことが重要です。