原油埋蔵量世界一のベネズエラ。政情不安で産油国として体をなさなくなっている

 今、南米の産油国ベネズエラ情勢が混迷を極めています。数年前から政情不安、ハイパーインフレが起きているなどの報道がありましたが、特にここ数カ月間は米国による石油産業への経済制裁で、反米の現政権にとって打撃となっています。

 さらに、周辺国ブラジルやコロンビアなどへ、ベネズエラからの難民が増加しており、米国とベネズエラだけの問題ではなくなっています。

 このような状況の中で浮上しているのが、ベネズエラの原油供給の減少観測です。

 ベネズエラはOPEC加盟国であり、サウジアラビアを上回る世界No.1の原油埋蔵量を有するなど、「石油の国」という顔を持っているため、政情不安が世界の原油供給を減少させるのではないかという懸念が広がっています。

 ベネズエラの原油生産量と、OPECのシェアを表した図4を見ると、ベネズエラの原油生産量は2016年ごろから長期減少傾向にあります。OPEC内のシェアも低下傾向にあります。

図4:ベネズエラの原油生産量と同国のOPECシェア

出所:EIAデータより筆者作成

 生産・精製施設の老朽化や、同国の政情不安などの影響で、2017年1月のOPEC、一部の非OPECの減産が始まる前から始まった後、現在に至るまで、加盟するOPECの方針に関わらず、同国の原油生産量は減少の一途をたどっています。ベネズエラはすでに自国で生産量をコントロールできなくなっており、自国都合の「自然減」状態にあるといえます。

 2019年1月から始まったOPECプラスの減産では、ベネズエラは減産免除国となりましたが、減産は、自分でコントロールできることを前提とした「自主的で人為的な生産削減」であり、ベネズエラがそれを実施できる状況にないことが、減産免除となった要因だと筆者は考えています。

 原油生産量の自然減により、ベネズエラのOPEC全体の原油生産量に占めるシェアも低下傾向にあり、1998年ごろは10%前後でしたが、2018年後半には4%程度まで下落しています。

 このようにベネズエラの原油生産量の減少や、OPECでのシェア低下を考えれば、ベネズエラの産油国としてのプレゼンスは低下していると言えます。

図5:ベネズエラの石油に関わる状況

 出所:各種情報より筆者作成