近年の米シェールの生産増加ペースは、逆オイル・ショック前超えに

 EIAは全米にシェール主要地区が7つあるとしています。

 カナダと接するノースダコタ州とモンタナ州にまたがるバッケン地区、テキサス州にあるイーグルフォード地区、テキサス州とその周辺の州にまたがるパーミアン地区、ヘイネスビル地区、アナダルコ地区、ユタ州とその周辺に広がるナイオブララ地区、そして米東部アパラチア山脈付近のアパラチア地区です。

 図4のグラフはこれらの7つの地区の原油生産量の合計を示したものです。2018年12月は、統計史上始めて日量800万バレルを超えました。

 米国全体のシェールの比率は68%を超え(2018年12月時点)、足元、シェールが増えれば米国全体の原油生産量が増える、という構図になっています。

図4:米シェール主要地区(合計)と米国全体の原油生産量

単位:百万バレル/日量
出所:EIAのデータより筆者作成

 図5は、7つの地区の中で最も生産量が多い、テキサス州とニューメキシコ州にまたがるパーミアン地区の原油生産量です。比較のためイランとイラクの原油生産量を掲載しました。

図5:パーミアン地区とOPEC主要国の原油生産量

単位:百万バレル/日量
出所:EIAデータより筆者作成

 イランの生産量は米国の制裁再開に向けた動きによって昨年夏以降、減少しています。減少する過程で、パーミアン地区が、イランを追い抜きました。

 現在OPECは14カ国で、生産量1位はサウジ、2位がイラク、3位がイランです(2018年12月時点)。すでに、パーミアン地区の原油生産量はOPEC第3位の規模になっていると言えます。

 イラクはパーミアン地区よりも生産量は多いのですが、2019年1月から6月まで減産を実施することになっています。詳細は「OPECプラス各国の削減幅が公開。OPEC加盟国の負担がやや重い傾向あり」で後述しますが、イラクも個別の削減目標を持っています。

 このため、イラクは少なくとも6月までは生産量を増やしにくい状況が続きます。今後、さらにパーミアン地区の原油生産量が増加した場合、同地区がイラクを上回る可能性も出てきます。

 このように、増加の一途をたどる米シェール主要地区の原油生産量において、図6のとおり、近年の増加ペースは、逆オイルショック前を超えていることが分かります。

図6:米シェール主要地区の原油生産量の推移と前月比 

単位:百万バレル/日量 
出所: EIAデータより筆者作成

 2014年後半から2016年後半にかけて発生した逆オイル・ショックの時は、石油業者の活動が停滞したことで一時的に生産量が減少しました。赤い縦の棒グラフは、米シェール主要地区の原油生産量の前月比を示したものですが、この赤い棒グラフは逆オイル・ショックの間、マイナス(下向き)の状態が続きました。

 ここで注目したいのは、2010年ごろから始まったシェール革命後、逆オイル・ショックまでの赤い棒グラフの長さと、逆オイル・ショック後の同グラフの長さです。

 どちらも上向きですが、その規模は逆オイル・ショック後の方が大きいことがわかります。逆オイル・ショック前は前月比日量10万バレル程度の増加だったものの、逆オイル・ショック後は日量20万バレルを超える増加が続いたり、時には30万バレルを超える月もみられたりしました。

 逆オイルショックという石油関連企業にとっての大きな逆風の中で、経済活動の合理化や技術革新が進んだことが伺えます。米国全体の原油生産量については、以前のレポート「原油相場、反転上昇はなぜ?米中貿易戦争中でも世界の石油消費は増加」で解説しましたが、2019年も増加傾向が続くと言われています。