トヨタ・本田と比べて収益基盤が弱い日産

 日産自動車に投資するリスクは、トヨタ自動車や本田技研工業に投資するリスクよりも、明らかに高いと言えます。日産の収益基盤がトヨタや本田ほど堅固でないからです。それが営業利益率の違いに表れています。

 2018年9月中間期の営業利益率は、トヨタが8.6%、本田が6.5%、日産が3.8%です。トヨタは米国で利益率の高いSUV(スポーツ用多目的車)の販売を伸ばし、本田は新興国で二輪車の販売を伸ばし、収益を改善しました。ところが日産は、米国での不振が響いて減益でした。

 3社の収益力の違いは、所在地別の営業利益率にあらわれています。以下の表をご覧ください。

日産・トヨタ・本田の所在地別セグメント利益率比較:2018年9月中間決算実績

コード 銘柄名 日本 北米 欧州 アジア
7201 日産自動車 2.9% 5.0% ▲1.9% 3.8% 0.0%
7203 トヨタ自動車 9.5% 2.0% 3.9% 10.8% 5.5%
7267 本田技研工業 3.7% 1.8% 1.6% 11.3% 8.1%
注:各社決算短信より楽天証券経済研究所が作成。日産は日本基準、トヨタは米国基準、本田はIFRSで財務諸表を作成しているので、利益率を単純比較はできない。ただ、所在地別セグメント利益は、3社とも日本の営業利益に近い概念で作成しているので、一定の比較可能性はある

 日産は米国での利益率が高いものの、他の地域では、トヨタ・本田より利益率が低くなっています。欧州事業は日産だけが赤字で、ルノーとの提携を十分に生かせていません。収益基盤の違いを見ると、世界景気が変調を来たす場合、日産が受けるダメージが一番大きくなると考えられます。日産への投資リスクは、景気悪化局面で高くなります。

 さらにいうと、トヨタ・本田に投資するよりも、ブリヂストンに投資する方が、リスクは相対的に低いと考えています。ブリヂストンの収益基盤はさらに堅固だからです。それが、利益率にあらわれています。2018年1~9月期(第3四半期までの累計)で、営業利益率は、10.9%で、トヨタ・本田を上回っています。所在地別の利益率でも、以下の通り、トヨタ・本田を上回っています。

ブリヂストンの所在地別セグメント利益率:2018年1~9月期

コード 銘柄名 日本 北米

欧州・ 中近東・ アフリカ

中国・ アジア・ 太洋州
5108 ブリヂストン 12.1% 10.0% 2.3% 9.6%
注:同社決算短信より楽天証券経済研究所が作成。所在地別セグメント利益は、日本の営業利益に近い概念で作成

 

政治リスクに翻弄される自動車株は、株価指標で見て割安に据え置かれる

 自動車関連株は、もともと、貿易戦争でダメージを受ける懸念、世界景気が減速する懸念から株価低迷が続き、PER(株価収益率)・配当利回りから見て、割安なバリュエーションに据え置かれています。中でも日産の株価指標で見た割安度がきわだっています。

トヨタ・本田・日産・ブリヂトンのバリュエーション比較:11月26日

コード 銘柄名 株価:円 PER:倍 配当利回り
7201 日産自動車 978.4 7.7 5.8%
7203 トヨタ自動車 6,805.0 8.6 3.2%
7267 本田技研工業 3,158.0 8.3 3.5%
5108 ブリヂストン 4,523.0 11.1 3.5%
出所:各社決算資料より作成。PERは11月26日株価を今期1株当たり利益(会社予想)で割って算出、配当利回りは今期1株当たり配当金(会社予想)を11月26日株価で割って算出、ただし、トヨタ自動車の配当金は楽天証券予想

 自動車ビジネスのリスクが高くなっている中、私は、ブリヂストンがもっとも投資魅力が高く、ついで、トヨタ・本田と考えています。日産は配当利回りが高いものの、リスクの高さを考え、保有するにしても、最小単位(100株)に留めたほう良いと考えます。

 また、自動車関連株に投資するならば、自動車向けの電子部品で成長する企業の方がより魅力的とも考えています。自動車の電装化・電動化が進む中、自動車向けの電子部品は安定的に成長が期待されるからです。自動車向けの比率が約2割に達している村田製作所(6981)、自動車用半導体で世界第3位のルネサスエレクトロニクス(6723)、自動車用モーターが成長事業となっている日本電産(6594)などに、注目しています。

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