日本の消費関連銘柄に悪材料が増えています。自然災害がインバウンド消費に影を落としているほか、米中貿易摩擦の懸念を背景に中国関連銘柄にも手を出しにくい状況です。インバウンド消費が年内に本格回復する可能性は低いでしょう。

 さらに、来年2019年の10月には消費増税が待っています。これを控えて、各小売企業は来期の業績予想を控えめに出してくる可能性があります。ただし、今期発生している悪天候や自然災害などの悪材料は一過性のものであると言え、来期はその分販売のハードルが下がると考えられます。この効果が消費増税による影響をどこまで相殺できるかが焦点になります。

 消費増税が年後半からの予定であるため、来期は、各企業が上期下期でどのような販売戦略を立てるのかに注視する必要もあります。こうしたなか、今後、意識されるとみられるテーマが軽減税率です。スーパー、コンビニエンスストア、フードデリバリーセクターは軽減税率の恩恵を受ける可能性が高く、消費増税が悪材料になりにくいと考えられます。

 2019年10月1日に実施される予定の消費増税(8%から10%に上昇)ですが、一部の商品は軽減税率の対象となり、消費税率は8%に据え置かれる公算です。軽減税率の対象は、酒類・外食を除く飲食品と、定期購読契約に基づく週2回以上発行される新聞などになる見通しです。

 来年は、スーパー、コンビニエンスストア、フードデリバリーセクターにとって、消費増税を避けられるだけではなく、外食から顧客を奪う好機にもなるでしょう。近年、節約志向が高まるなかでも、外食および調理食品へのニーズは強く、日本の消費者は手軽さや時間の効率化に価値を見出していると考えられます。このニーズをスーパー等が取り込むことが期待されます。

 スーパーの中でも、ヤオコー(8279)ベルク(9974)に注目しています。高い販売力を背景に、ヤオコーは27期、ベルクは13期連続で純利益を更新する見通しです。
また、足元で株価が上昇しているものの、オイシックス・ラ・大地(3182)にも期待しています。25日移動平均線の水準である3,200円まで株価が下がれば投資妙味がありそうです。

 

日本の消費関連銘柄に悪材料が増える

 日本の消費関連銘柄に悪材料が増えています。猛暑に加え、豪雨、台風、地震といった自然災害がインバウンドを含む消費環境に影を落としています。さらに、2019年10月に実施される予定の消費増税、中国の景気減速など、来年に向けて注意が必要な材料もあります。

 

災害がインバウンド消費に影響を及ぼす

 インバウンド消費への影響は数字になって出てきています。韓国の観光客に中心に日本で旅行手配を展開するHANATOUR JAPAN(6561)の旅行事業における取扱高推移は足元で大きく落ち込んでいます。韓国は日本と距離が近いため、訪問時期を見直すことが比較的容易です。キャンセルをしやすい分、最初に顧客の反応が出たと考えられます。

<HANATOUR JAPAN、インバウンド需要が落ち込む>
HANATOUR JAPANの旅行事業における取扱高増減率(前年同月比)
(期間:2018年1月~8月)

出所:会社資料より楽天証券作成

 

 関西に強い大丸を展開するJ.フロントリテイリング(3086)の免税店売上げも、二桁増収ではあるものの勢いが落ちています。

<J.フロントリテイリング、免税売上高の勢いが鈍化>
大丸松坂屋百貨店における免税売上高の増減率
(前年同月比)(期間:2018年1月~8月)

※8月は速報値
出所:会社資料より楽天証券作成

 

 9月に北海道地震が起き、韓国以外の国々にもキャンセルが広がっている可能性を考えると、インバウンド消費の本格的な復活は年明け以降になるでしょう。