米中貿易摩擦の懸念が拭い去られていない

 中国における消費マインドの低下も潜在的なリスクです。現状は、中国の8月の小売売上高は前年同期比9.0%増で推移しており、消費活動は堅調に見えます。米中貿易摩擦の懸念は拭い去られていませんが、それを受けて中高所得者がすぐに出費を抑制するとは考えにくく、当面、小売売上高は拡大していくとみられます。しかし、中国経済に対する懸念が長期間に渡れば、高級品を中心に販売が停滞するリスクがあります。

 

2019年の消費増税で購買力は低下へ

 2019年10月1日に実施される予定の消費増税(8%から10%に上昇)については、年の前半は駆け込み需要、後半は反動減がテーマになりますが、実質賃金が2%上昇しない限り消費者の購買力は低下するでしょう。政府が自動車や住宅などの購入支援策や子育て世帯への補助を実施する可能性がありますが、恩恵を受けない人にとって消費増税は打撃となります。このテーマについては、2月決算の小売り企業が機関投資家向け説明会を開き始める3月頃から本格的に話題になると思います。各企業がその影響をどのように通期計画に織り込むのかが焦点になります。

 

軽減税率対象の商品は税率が据え置きに

 ただし、2016年に公布された「抜本改革法等改正法」により、一部の商品の消費税率は据え置かれる公算です。軽減税率の主な対象は、酒類・外食を除く飲食品と、定期購読契約に基づく週2回以上発行される新聞です。飲食品については同じ商品であっても、持ち帰る目的で購入したものは消費税が8%に、店内で飲食した場合は10%になる見通しです。

 

スーパー、コンビニエンスストア、フードデリバリー関連の企業に有利

 軽減税率は、スーパー、コンビニエンスストア、フードデリバリー関連の企業に恩恵をもたらすでしょう。節約のために外食に行く回数を減らして、スーパーやコンビニの惣菜を選ぶ消費者が増加すると考えられます。特に、飲食品の持ち帰りが基本の食品スーパーが有利な立場になります。食品メーカーが、自宅で簡単に調理できる加工食品や冷凍食品を訴求することによって、スーパーの惣菜以外のコーナーも魅力度が高まりそうです。

<主要スーパー、コンビニエンスストア、フードデリバリー企業一覧>