株、為替、コモディティ(商品)…投資対象として見たコモディティとは?

 株や為替、最近では仮想通貨も加わり、たくさんの投資商品がある中に、コモディティ(商品)というカテゴリがあります。

 金(ゴールド)やプラチナ、銀、パラジウムなどの貴金属、原油、ガソリン、灯油などのエネルギー、トウモロコシ、大豆などの農産物への投資です。

 

 金やプラチナ、銀など個人で保有することができる商品は現物での取引ができます。また、株式を売買するように、個々のコモディティの値動きに準じた設計になっているETF(上場投資信託)、あらかじめ期限を決めて実際に動かす資金よりも少額な資金で取引ができる商品先物などがあります。

 またコモディティに関わりが深く、価格変動がコモディティ価格と似ている企業の株を保有することも広い意味でコモディティへの投資と言えます。

 近年は、コモディティに関連する投資商品も増えています。初心者から上級者まで幅広い層の投資家が投資先として選択することができるので、投資の初心者の方にも当然ながらコモディティ投資の門戸は開かれています。

 

コモディティ価格は原因か?結果か?関連ニュースを吟味

 私たちは今、情報化社会にあり、インターネットやテレビ、新聞、証券会社の情報ウェブサイトなどで、株や為替、コモディティの値動き、それに関連するニュースを見ることができます。特に近年はスマホ(スマートフォン)を使えば、どこでも誰でも手軽にそれらの情報を入手することができます。コモディティを含め、さまざまな市場で起きていることの全体像を把握する上で、情報が足りないと感じることはほとんどないと思います。便利な半面、情報過多になり、私たちは情報をかき分けながら生活していると言えます。

 このような社会で生活するには「情報の選別」が重要ですが、とりわけ重要なことは「情報を思考する」ことと筆者は考えています。

では、コモディティ価格の変動を報じる2つのニュースを例に挙げ、「情報を思考する」の重要性をお伝えします。

「逆オイルショック」と言われた2014年半ばから2016年初旬までの原油価格の急落、低迷の際には、「原油価格が急落したため、エネルギー関連株が下落し、主要な株式指数が下がった」という内容と、一方で「原油や銅の価格が上昇している。エネルギーや素材価格の上昇は消費が拡大しているためだ。これは足元の景気が上向いている証拠である」と足元の景気動向の解説する視点で報道されていました。

 ともに、コモディティ価格の変動に関する報道ですが、前者は、コモディティ価格の下落は株式市場の下落の「原因」(図の1)、後者は、コモディティ価格の上昇は景気が上向いていることがもたらした「結果」(図の2)と言えます。

図:コモディティ(商品)価格の変動要因 概念図

出所:筆者作成

 このように、コモディティ価格の動きは、何かの「原因」にも、何かの変動による「結果」にもなります。

 星の数ほどある情報でも、コモディティ価格の動きが原因なのか結果なのかは教えてくれません。情報の受け手側の思考が必要になってきます。

 投資という点で考えれば、買った資産が値上がりすれば資産の額は増えますので、その値上がりが原因でも結果でもどちらでも問題はないのかもしれません。

 しかし、どちらかと言えば何か原因(拠りどころ、動機)があって上昇しているので買う、つまり結果的に上昇していることを認識した上で買うほうが自然だと思います。

 もちろん、原因として報じられている場合でも、その原因の原因が頭の中で明確になっていればよいと思います。

 例えば逆オイルショックの例であれば、なぜ原油が下落しているのか?を調べて明確にするということです。このときはOPEC(石油輸出国機構)が減産を見送って価格下落を容認したことが要因でした。

 コモディティの値動きを報じるニュースを見たとき、思考し、原因か結果かを判断する、株、景気動向の原因として報じられていた場合、そのコモディティ価格がなぜ動いたのを調べることが重要です。

 

コモディティ価格の動向、カギを握るのは「生産者」

 原因と結果の話からわかることは、「コモディティは株・景気動向と相互関係にある(お互いが原因にも結果にもなる)」ということです。

 筆者が業務にあたっている中で感じるのは、コモディティと株、景気動向の相互関係を報じるニュースが多いことです。それゆえ、自ずと思考が必要になるケースが多くなります。

 ただ、コモディティ価格は相互関係だけで動いているわけではありません。むしろ、相対的にニュースの数が少ないコモディティ独自の変動要因のほうが、コモディティ価格の動向を考える上で重要です。

 そのときのコモディティ価格の変動が、株、景気動向との相互作用によるものなのか? コモディティ独自の要因によるものなのか? あるいは両方なのか、見極めは難しいものの、一つ言えることは「相互作用だけではコモディティの値動きを説明することはできない」です。

 コモディティ市場で売買されている対象はモノです。冒頭で示したいずれのコモディティも、生産者と消費者が存在します。そして価格は両者のバランスによって決まっています。
生産者と消費者の2者はほとんど対等の立場にありますが、かつては特定の市場参加者による買い占めや売り崩し、カルテル(市場独占)などによって、国際的な市場であっても価格の急騰、急落が起きました。

 しかし現在は、インターネットの発達、そこから取引に関わるインフラ整備が進んだこと、資本主義的な考え方(平等な競争)がより強く用いられるようになったこと、取引参加者の種類が増加したことなどにより、市場は以前よりも誰かに独占されることは少なくなりました。

 高く売りたい生産者と安く買いたい消費者が(細かく言えば、生産者でも消費者でもない投機筋の出入りもありますが)、開かれた市場で対等に取引をする環境が整ってきています。

 特に現在のように、2003年ごろの新興国が勃興したときのような急激な消費拡大期ではなく、消費が長期的な微増状態にある中においては、生産者の動向がコモディティ価格の動向を決める重要な要因になります(図の3)。

 現在、コモディティ市場の動向のカギを握っているのは生産者にあると言っても過言ではないと筆者は考えています。

 生産者起因の変動要因(例)は次のとおりです。

 具体的な生産者(国)については、以下の記事をご参照ください。
 あらかじめ、どの国でどのコモディティが生産されているのかを把握しておくことは、各コモディティ価格の動向を考える上で非常に重要です。

◆金・プラチナなど貴金属の生産国について

コモディティ☆クイズ【6】「貴金属の生産国(地図付)」に挑戦してみよう!

◆原油の生産国について

コモディティ☆クイズ【3】「米国の原油生産の歴史」に挑戦してみよう!

コモディティ☆クイズ【2】「非OPEC」に挑戦してみよう!

コモディティ☆クイズ【1】「OPEC」に挑戦してみよう!

◆トウモロコシの生産国について

コモディティ☆クイズ【7】「とうもろこし関連国(地図付)」に挑戦してみよう!

 また、図の4、5、6についての説明は以下のとおりです。

4.株価、景気動向が好転(悪化)すれば生産者が設備投資を進める(中止する)。その結果、生産量が増える(減少する)
5.コモディティ価格の上昇(下落)が消費減少(増加)のきっかけになる。
6.コモディティ価格の上昇(下落)が生産増加(減少)のきっかけとなる。

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