下落「第3波」からの戻りを試す日経平均

 先週の日経平均株価は、1週間で837円(4.1%)上昇し、2万1,454円となりました。下落第3波のきっかけとなった「米中貿易戦争」の懸念がやや後退したことが、好感されました。北朝鮮をめぐる地政学リスクの後退や、一時1ドル107円台まで円安が進んだことも、日経平均が買い戻される要因となりました。

 下落第1波・第2波では、200日移動平均が下値支持線として意識されていました。ところが、下落第3波で、200日移動平均線をあっさり下に抜けたことが、不安材料となっていました。先週の戻りで、200日移動平均線を回復できたことは、とりあえず安心材料となります。

<日経平均日足:2017年11月1日~2018年3月30日>

 

<参考>下落「第1波」「第2波」「第3波」

 下落第1波:2月2日発表の1月の米雇用統計がきっかけ。平均賃金上昇率が高く、米利上げが加速する懸念が生じ、NYダウや日経平均の急落を引き起こす。

 下落第2波:3月1日トランプ米大統領が、鉄鋼とアルミニウムに輸入関税を課す方針を表明したことがきっかけ。米中貿易摩擦が起こる懸念を生じ、NYダウ・日経平均が再び急落。

 下落第3波:3月22日トランプ大統領が、600億ドル(約6兆3,000億円)相当の中国製品に高関税を課す対中制裁を決定し、米中貿易摩擦が激化する懸念から、NYダウ・日経平均が急落。

 

NYダウ、ナスダックの戻りは鈍い

 先週の米国市場は、3月30日(金)が休場でした。3月26(月)~29(木)の4日だけの取引ですが、日経平均に比べると、NYダウ・ナスダック株価指数とも、戻りの鈍い展開でした。

 日経平均が1週間で4.1%上昇したのに対し、NYダウは2.4%、ナスダックは1.0%しか上昇していません。フェイスブック・ショックが続き、米IT大手の株価下落が続いたことが、影響しました。IT大手の比率が高いナスダックの上値が一番重く、NYダウも戻りが鈍いと言えます。

<NYダウ日足:2017年11月1日~2018年3月29日>

 

<米ナスダック株価指数日足:2017年11月1日~2018年3月29日>

 

 ナスダック株価指数は、下落第1波・第2波の後の戻りがはやく、3月中旬に一時最高値を更新しています。ナスダックの戻りがはやかったのは、米IT大手(フェイスブック・アマゾン・ネットフリックス・アルファベット(グーグルの持株会社))など、世界を支配するIT大手企業の構成比が高いからです。下落「第1波」「第2波」の後、米国株の戻りを牽引したのは、これらIT大手でした。

 ところが下落第3波では、これらIT大手の下落率が高くなりました。フェイスブック・ショック【注】が起こり、フェイスブック株が急落した他、アマゾン・グーグルも下落しました。米IT大手の株価下落が続いたことが、ナスダックの上値を重くしました。

 

【注】フェイスブック・ショック

 3月16日「フェイスブックの利用者5,000万人のデータを、英コンサルティング会社ケンブリッジ・アナリティカが不正に取得し、2016年の米大統領選でトランプ陣営に有利に働くように活用した」と報道があってから、米国でフェイスブックへの批判が高まっています。利用者に「フェイスブックのアプリを消そう」との運動が拡大し、フェイスブックへの広告出稿を見合わせる企業も増えています。

 かねてより米国や英国の議会では、フェイスブックやグーグルなど、大量の個人データを活用して高収益をあげている企業の、情報管理の甘さに、強い批判がありました。今回の問題を受けて、米国で批判が先鋭化しました。

 

下落第3波の原因となった「複合ショック」は、まだ収束していない

 値ごろ感から、先週は日米とも、株が買い戻されましたが、まだ下落第3波を生じた複合ショックは収束していません。複合ショックを引き起こした5つの要因で、現時点で既に解決したと言えるものはありません。

下落第3波を生じた5つの弱材料:足元の状況

1.米中貿易戦争の懸念

 過剰な悲観は収まったが、これからどんな追加の悪材料が出てくるか、まだわからない状況。

2.フェイスブック・ショック

 フェイスブックやグーグルなど米IT大手への批判が広がっている状況に変わりはない。アマゾンに独自の課税を検討していると、トランプ大統領が表明したことも逆風。

3.円高

 先週、一時1ドル107円台まで円安が進んだが、先週末には、1ドル106.30円まで戻った。

4.米利上げが続くことへの不安

 3月21日に利上げ、さらに年内2回の利上げが予想されている。

5.日米の政治不安

 状況は変わっていない。

 

長期投資で買い場と考える。ただし、短期的にはまだ下値不安が残る

 日経平均は、長期投資の観点から、「買い場」との判断は変わりません。ただし、短期的には、まだ下値リスクも残っています。押し目で積極的に買っていったらよいと考えています。

 

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