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著者の愛宕 伸康が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
物価から見える価格競争力強化の重要性~輸出物価上昇がカギ~

 最近、円安が経済・物価、そして金融政策に及ぼす影響について目が向きがちですが、今週は日本の企業や経済にとって何が重要か、物価統計の動きを見ながら本質的な部分に切り込んでみたいと思います。

円安は輸入物価だけではなく、輸出物価にも影響を及ぼす

 先週のレポートで、円安が輸入物価を押し上げる影響は、輸入物価の円ベースと契約通貨ベースの違いに現れると説明し、その前年比の差がドル/円相場の前年比と強く相関していることを見ました(図表1)。

<図表1 為替の輸入物価への影響とドル/円相場>

(出所)日本銀行、楽天証券経済研究所作成

 しかし、国内物価への波及を考える際は輸入物価に焦点を当てるのが自然ですが、経済全体への影響を考える際は輸出物価への影響も考慮に入れる必要があります。実は、輸出物価についても図表1と同様のグラフを作ることが可能です。

 図表2は、輸出物価の円ベースと契約通貨ベースの前年比の差(「為替の影響」)を、ドル/円相場の前年比と比較したものです。図表1と同様、それらが強く相関していることが分かります。

<図表2 為替の輸出物価への影響とドル/円相場>

(出所)日本銀行、楽天証券経済研究所作成

為替は交易条件を左右しない

 以上から、輸出入物価の経済に与える影響を見る際によく利用する交易条件(輸出物価を輸入物価で割って算出)は、契約通貨ベースで計算しても円ベースで計算しても大差ない姿となります。図表3は両者の前年比ですが、ほぼ重なっていることが見て取れます。

<図表3 日本の交易条件(契約通貨ベースと円ベース)>

(出所)日本銀行、楽天証券経済研究所作成

 つまり、為替は交易条件に大きく影響することはなく、交易条件を決めるのは、資源価格の動向やその背景にある海外景気、日本から輸出する財・サービスの競争力や価格支配力といった本質的な要因だと考えることができます。